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異色ボクサーが無念の引退 AKBカフェは閉店、病魔にも蝕まれ…

[ 2020年5月4日 12:04 ]

昨年3月の日本ミドル級タイトルマッチで王者・竹迫司登(右)と引き分けた加藤収二さん
Photo By スポニチ

 AKBカフェ勤務の異色ボクサーとして話題となった加藤収二さん(29=中野サイトウ)が現役引退を発表した。4月30日に日本ボクシングコミッション(JBC)が発表した日本ランキングでミドル級3位にランクされたが、同日、自身のツイッターに「世間が騒がしい中私事なんですが、ボクシングを引退する事になりました。少し前に決めていたんですが、理由は持病の悪化です」と投稿した。

 14年12月にプロデビューした加藤さんは、17年全日本新人王に輝き、昨年3月には日本王者・竹迫司登(ワールドスポーツ)に挑戦。惜しくも引き分けで王座獲得を逃したものの、竹迫のデビューから続く連続KO勝利を10で止めた。同8月に竹迫と再戦したが、無念の8回TKO負け。これが現役最後の試合となった。

 18年11月の最強挑戦者決定戦から3度ほど加藤さんを取材させてもらった。「AKB48 CAFE&SHOP AKIHABARA」のキッチンで働いていると聞いたのは最初に取材した時だった。外見は…あくまでも個人の感想だが「気は優しくて力持ちタイプ」。AKBとイメージは何一つ重ならなかったが、朴訥で真面目な印象を受けた。そんな人柄はファイトスタイルにも表れていたように思う。竹迫との再戦にはAKBカフェの関係者や友人ら約400人が後楽園ホールに応援に駆け付け、その声援の“熱量”から加藤さんが愛されている選手であることが伝わってきた。

 AKBカフェが昨年12月末で閉店。慣れ親しんだ仕事を離れ、失意の加藤さんは病魔にも蝕まれていた。本人のツイッターによると、6年前から心臓が悪く、昨年から体調不良が続いて休みながら練習していた。診断は確定していないものの、心臓の20%近くが壊死し、拡張型心筋症の可能性もあり、今後も検査を続ける必要があるため、ドクターストップとなったと説明している。

 今年の飛躍を目指し、1月には3週間のスパーリング合宿を行うために渡米したが、米国滞在中に検査結果が判明。加藤さんに競技を続行する選択肢は残されていなかった。

 「まだ、やり残したこともあるし、倒したい人もいましたが、自分でも体感的にパフォーマンスが発揮できないのは感じていて、最高のパフォーマンスができないなら観に来てくれている方々に失礼になるし、そんな中途半端な状態では勝てないと思い辞めることにしました」

 志半ばにして病で道を断たれ、どれほど無念だったろう。だが、夢だったチャンピオンベルトを手にすることはできなくても加藤さんの闘いはたくさんの勇気や元気を与えてくれた。引退しても、その姿はきっと多くの人たちの胸に焼き付いていると思う。(大内 辰祐)

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2020年5月4日のニュース