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雅雪V2戦を山中氏が展望 不安な点は「サウスポーとの戦い方」「攻めていく姿勢が重要」

[ 2019年5月22日 21:16 ]

25日(日本時間26日)に米国でV2戦を行う伊藤雅雪
Photo By 提供写真

 WBO世界スーパー・フェザー級王者の伊藤雅雪(28)が5月25日(日本時間26日)、アメリカのフロリダ州キシミーで同級7位のジャメル・へリング(33=米国)を相手に2度目の防衛戦に臨む。昨年7月にキシミーで戴冠を果たした伊藤にとっては験のいい場所でのV2戦となるが、挑戦者のへリングは12年ロンドン五輪に出場した実績を持つ長身サウスポーだけに楽観視できないカードといえる。それでも伊藤は「海外で勝つことはスターへの第一歩。世界にアピールしたい」と自信をみせている。この注目ファイトについて、元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏にみどころを聞いた。

 ――伊藤選手は昨年7月、今回の試合地と同じキシミーで無敗のホープ、クリストファー・ディアス(24=プエルトリコ)からダウンを奪って完勝、世界タイトルを獲得しました。まずは、あの試合についてうかがいたいと思います。

 山中「試合前、伊藤選手は『積極的に行く』と言ってはいましたが、正直いって本当に行けるのかどうか疑問に思っていたところはあります。でも、予想以上に積極的に攻めて出たので驚きました。以前とは気持ちが違ったんでしょう」

 ――山中さんは伊藤選手の初防衛戦(18年12月)をリングサイドの放送席で解説しましたが、さらに成長は感じられましたか。

 山中「世界タイトルを獲得したときよりも、さらに強く逞しくなりましたよね。自信をつけたこともあって、一段と成長して凄みを増したと感じました。自分で志願して海外でトレーニングしているほどなので、本当に強くなりたいという思いがあるんでしょう。その強い気持ちがリングの上でも出ていますね」

 ――山中さんから見て、伊藤選手はどんなボクサーでしょうか。

 山中「まず見た目がイケメンですよね(笑)。で、ボクシング以外では優しい性格です。ボクシングに関しては東洋太平洋チャンピオン時代もシャープな面はありましたが、最近はそこに攻めて出る姿勢と力強さが加わりました」

 ――攻めて出る姿勢、とは具体的にどういうことでしょうか。

 山中「最近の世界戦2試合は気持ちが前に出ているので、以前よりも重心が少し前にかかるようになっているんですよ。それがパンチに伝わる力になっているので、重み、威力、強さや凄みに繋がっているんです。前に出ながら繰り出すパンチと下がりながら打つパンチでは体重の乗り方が違いますからね。それに伊藤選手は世界チャンピオンという現状に満足していないし、もっと上に行きたいという思いが見えますね。だからキラキラしているじゃないですか」

 ――伊藤選手はアマチュア経験がないままプロデビューしたわけですが、潜在的な能力が相当高いということでしょうか。

 山中「まだ28歳でしょう? いまの時代でアマチュア経験がないままここまで来るだけでもすごいことだと思います。特別な運動能力、センスがあるんでしょう。まだ開発されていない能力、伸びしろがあると思います」

 ――アマチュア経験がないため、逆に不安な面もありますか。

 山中「サウスポーとの戦い方に関してはどうなのか、そのあたりが気になります。アマチュア出身者の場合、仮にプロでサウスポーとの対戦経験が少なくても戦い方に慣れていることが多いものなんです。でも、アマチュア経験がない選手の場合、サウスポーとの戦い方に不慣れなことがあるんです。これまでに伊藤選手がどれだけ力のあるサウスポーと戦ってきたか、そしてどう戦うか、そのあたりが気になりますね」

 ――今回、伊藤選手が迎えるへリングは長身のサウスポーです。

 山中「しかもオリンピックに出場しているんですよね。長身サウスポーというだけで戦いにくく敬遠されがちなのに、加えてオリンピックに出ているほどの実力者というわけですから、ちょっと厄介かもしれないですね」

 ――まさに山中さんが長身サウスポーでしたが、自分よりも少し背の低い右構えの選手との試合は何がギになるのでしょうか。

 山中「僕の場合は距離を一番大事にしていました。こちらのパンチは当たるけれど相手のパンチは届かない、その距離から踏み込んで打つわけです。右構えの相手との試合では利き手、つまり僕の左手、相手の右手を気にして戦いました。すでに構え合ったときの位置は相手の左フックが当たらない距離なので、踏み込んで打ってくる右を警戒しました。へリングが僕と同じスタイル、考えかどうかは分かりませんが…」

 ――伊藤選手はどんな点に注意する必要があると思いますか。

 山中「伊藤選手にとってへリングは戦いにくいタイプかもしれないけれど、攻めていく姿勢が重要になるでしょうね。まして伊藤選手は注目されているなかでアピールしたいはずなので。警戒する相手のパンチとしては、右ジャブから絶妙なタイミングで放たれる左ストレートでしょうか。その左に注意しながら、パンチの軌道やタイミングを見極めて攻めていくことが要求される試合になると思います。ときには強引に攻めて出なければいけない場面もあるかもしれませんね」

 ――伊藤選手にエールを。

 山中「スーパー・フェザー級には海外でも人気と実力のある選手が集まっているので、伊藤選手はただ勝つだけではなく内容も問われる立場になっていますよね。だから『また伊藤の試合を見たい』と思わせるような戦いをしてもらいたいですね。彼は(WBA&WBO世界ライト級王者)ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)との対戦を目標にしているんでしょう? その目標設定はすごくいいと思います。ロマチェンコの名前を出したとき、伊藤選手はすごくギラギラしていましたから。強がっているのではなく、ワクワクしている感じでした。挑戦する気持ちを忘れていない証拠だと思います。だから、今回もみんなの期待に応えるような勝ち方をしてほしいですね」

 なお、試合は5月26日午前11時からWOWOWライブで生中継される。

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2019年5月22日のニュース