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因縁のゴロフキンVSカネロ 村田とのビッグマッチ実現への条件は――

[ 2018年9月15日 10:40 ]

1年ぶりに再戦するサウル・“カネロ”・アルバレス(左)とゴロフキン(AP)
Photo By AP

 プロボクシング今年最大のビッグマッチが、15日(日本時間16日)に米ラスベガスでゴングを迎える。WBAスーパー&WBC統一世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(36=カザフスタン)と元WBC同級王者サウル・“カネロ”・アルバレス(28=メキシコ)による1年ぶりの再戦。昨年9月の初戦は議論を呼ぶ採点もあって三者三様の引き分けに終わったが、「ミドル級頂上決戦パート2」の決着次第でWBA正規王者・村田諒太(帝拳)の今後も変わってくる。

 日本のファンはゴロフキンに肩入れする人が多いのではないか。当初5月に予定されていた再戦は、2月にカネロのドーピング違反が発覚して延期。検出された禁止薬物クレンブテロールは、山中慎介を引退に追い込んだルイス・ネリ(メキシコ)のジルパテロールと同系統の物質だった。そしてカネロもネリ同様、「メキシコで食べた牛肉が汚染されていた」と意図的摂取を否定。出場停止6カ月の“大甘裁定”を勝ち取っている。「ボクシングも陸上のような厳しい判例をまねしてほしい」。カネロに批判的な村田の意見にうなずく日本人は多いだろう。

 村田が希望するゴロフキン―カネロ2の勝者との対戦は、ゴロフキンが勝った方が実現しやすいという側面もある。カネロとの初戦でPPV(ペイ・パー・ビュー)収益を含めて2000万ドル(約22億円)を稼いだとされ、今回は40億円近い収入が予想されているゴロフキンにとって、残り少ないキャリアで希望するのは話題性も兼ねたビッグマッチ。東京ドーム開催の可能性がある村田との対戦は条件を満たすもので、かねて村田戦にも前向きな姿勢を示している。一方、自ら巨額のファイトマネーを生み出せるカネロはわざわざ“敵地”へ乗り込む必要がなく、村田戦のメリットが少ない。ゴロフキンに勝てば次戦を12月にニューヨークで予定しており、村田とは日程的にも合わない。

 試合直前には気になる情報も入ってきた。アンダーカードのゲーリー・オサリバン(アイルランド)―デビッド・レミュー(カナダ)を、WBAが「ミドル級スーパー王座挑戦者決定戦」として承認したのだ。王座乱発で批判を浴び、王者減少の方針を打ち出しているWBAは本来、ゴロフキン―カネロの勝者であるスーパー王者と正規王者・村田の対戦を命じるべき。だが、村田にロブ・ブラント(米国)との指名試合を命じ、一方にも新たな指名挑戦者をつくろうとする指令には首をひねらざるを得ない。

 いずれにしろ、村田がビッグマッチを実現させるには、自身が10月20日の2度目の防衛戦でブラントをKOし、かつゴロフキン―カネロ2で明確な決着がつくことが最低条件だ。村田を取材する者としては、米スポーツ専門局ESPNの識者予想でカネロ勝利の声が多いのは気がかり。またも疑惑の採点などで中途半端な結果に終わり、来春に「3」が開催されるパターンだけは避けてほしいのだが。(専門委員・中出 健太郎)

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2018年9月15日のニュース