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村田 エンダムとの再戦での世界獲りへ 攻めの気持ちで臨めるか

[ 2017年8月16日 10:30 ]

世界戦発表会見でエンダム(右)とボードの前で握手する村田
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 ボクシングのロンドン五輪ミドル級で金メダルを獲得した村田諒太(31=帝拳)は当初、プロ転向に踏ん切りがつかなかったという。「人間って、どこか変わることを恐れているもの。今が楽だから、いろんな理由をつけて変わらないようにと、一生懸命自分を守っている」。金メダリストの地位を保ったまま“勝ち逃げ”する人生もあったと明かしている。

 デビュー後は世界王者を待ち望む周囲の期待と本当の実力とのギャップに戸惑った。「分かっていても、自分は強いとイキがらないといけない」時期もあった。勝利を積み重ねても、相手は世界的に無名の選手ばかり。ようやく強さに手応えを感じ、それでもトップとの力量差が不明のまま迎えた5月のWBAミドル級王座挑戦は、だからこそ大きな自信となった。

 村田が優勢だったため軽く見られがちだが、アッサン・エンダム(フランス)は屈指のスピードと鍛えられたテクニックを持つ実力者。村田はその相手をダウンさせ、内容的にも押し込み、世界王者を狙えるレベルにあることを証明した。最高の結果ではなかったものの、不可解な判定での敗戦によってむしろ評価を上げ、十分すぎるモチベーションをも得た。

 そして、エンダムとの再戦が10月22日に決まった村田に新たな重圧が降りかかっている。14日まで行った走り込み合宿で「前回は“村田は世界レベルと戦ってどうなの?”と疑問視された戦いでしたよね。それが“今回は勝ってくれるんでしょ”というプレッシャーに変わっている」と話した。「メンタルのつくり方が試合への課題となる」とも述べている。

 WBAは会長自ら初戦の結果を誤りとし、村田の負けと採点したジャッジを処分した。再戦が同じような展開になれば、村田の判定勝ちとなる確率は高い。そんな状況で再び日本に乗り込むエンダムが完全決着をつけようと打ち合いを挑めば、村田にとっては倒せるチャンス。これ以上ない舞台が整ったわけだが、どうぞ勝ってくださいと送り出される方もつらい。

 村田陣営はWBAに不満を示しながらも再戦を選択した。他団体王座への挑戦にはまだ時間を必要とするが、再戦指令が出たWBAなら即世界戦が可能だ。何より、大きな話題を集めた初戦から期間を置かない方がビジネス的にもやりやすい。「交渉は任せている」と話す村田も、そのあたりの事情は理解している。期待を裏切れないとの思いは前回以上のはずだ。

 「プレッシャーは自分の心がつくり出すもの」と村田が分析するのを聞いたことがある。周囲など気にしなければチャレンジするのも負けるのも怖くない、とも話していた。だが今は、自分が世界を獲れる地位に来たことを自分自身が分かってしまっている。ある意味で開き直れた初戦のような、攻めの気持ちで臨めるか。残り2カ月はあっという間に過ぎそうだ。(専門委員・中出 健太郎)

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2017年8月16日のニュース