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田中 逆転一発KOで初防衛 5回に人生初ダウンも左ボディー決めた

[ 2016年1月1日 05:30 ]

6回、田中(右)は左ボディーでサルダールからダウンを奪う

プロボクシングWBO世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦 王者・田中恒成 KO6回2分15秒 ビック・サルダール

(12月31日 愛知県体育館)
 WBO世界ミニマム級王者の田中恒成(20=畑中)が初防衛に成功した。同級4位のビック・サルダール(25=フィリピン)との一戦は5回にダウンを奪われるなど苦戦を強いられたが、6回2分15秒に強烈な左ボディー一発で逆転KO勝ち。前回のプロ5戦目での世界王座獲得に続き、6戦目での初防衛は国内最速記録となった。試合後は16年にライトフライ級に転向して2階級制覇を狙うことを宣言した。

 強烈な左ボディーで崖っ縁の状況を打開した田中は天に向かって右拳を高々と上げ、ニヤリと笑った。リング上には小学2年の妹・杏奈さんが祖父・健裕さん(享年73)の遺影を持って登場。毎試合応援に来てくれた祖父は11月7日に心筋梗塞で突然この世を去った。「逆転という形にはなってしまいましたが、おじいちゃんにKOをささげることができて良かった」。葬儀では棺に防衛戦のポスターを入れ、この日の試合前も仏壇の前で「勝ってきます」と手を合わせた。「何とか勝てました」。天国の祖父に届ける勝利を飾り、安どの気持ちでいっぱいだった。

 KOを奪う瞬間までは完全に劣勢だった。「離れると本当にうまかった」と自身より8・1センチもリーチが長いサルダールの攻めに苦戦。5回には右ストレートをまともに食らい、人生初のダウンも喫した。全てのラウンドでポイントを奪われたが「ボディーが効いているのが分かった。後半勝負と思っていたし、諦めずにいった」と冷静さを失わなかった。そして「接近すると頭が低くなる。くっついた時に左ボディー。これが一番得策」と6回に見事に作戦がはまった。プロ5戦目で国内最速王座を飾ってから7カ月。強烈なボディーで倒れた相手が起き上がれない。もちろん初防衛も国内最速だ。

 試合後には「16年は2階級制覇をすることを誓います」と宣言。1階級上のライトフライ級は世界4団体のうちIBFの八重樫東(大橋)ら3団体で日本人王者が存在する。7戦目での2階級制覇となると井上尚弥(大橋)の8戦目を超える世界最速。畑中会長は今後について「ゆっくり考えます」と言いつつ、日本人対決には「ファンが望むのであれば」とも言った。中京の怪物から世界の怪物へ、16年はさらなる飛躍の年にする。 (鈴木 悟)

 ◆田中 恒成(たなか・こうせい)1995年(平7)6月15日、岐阜県多治見市生まれの20歳。中京高―中京大。小5で競技を始め、高校4冠。アマ通算46勝5敗。高校3年だった13年夏の総体後に畑中ジムに入門、9月にプロテストB級合格。14年10月デビューから4連勝で東洋太平洋ミニマム級王座、15年5月に世界ミニマム級王座を獲得。1メートル62。右ボクサーファイター。

 ▽田中―サルダールVTR 田中が逆転のKO勝ち。序盤からリーチの長いサルダールの攻めに苦しみ、主導権を握られた。5回には右をもらってダウンを喫した。だが、距離を詰めて、細かくパンチを当ててリズムをつかみ、6回に強烈な左ボディーでリングに沈めた。サルダールは多彩な攻撃でポイントを積み重ねて、試合を有利に進めたが、及ばなかった。

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