日本ハムCBO 栗山英樹氏 見えないものが大事なんだと倒れた木が教えてくれる

[ 2025年7月1日 06:00 ]

栗山英樹氏の色紙「沐猴にして冠す」

 侍ジャパン前監督で日本ハム栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=64)による連載「自然からのたより」は、栗の樹ファームを囲む森の倒木からの学びについて。雪が解け、春を迎えてログハウスのすぐ近くに森の木が倒れてきた。防風林として植林された樹齢約60年の木。森の木を改めて見てみると、木を枯らす「サルノコシカケ(猿の腰掛け)」が生えている木もある。元気そうに見えても中身は違う。見えないものが大事なんだと倒れた木が教えてくれる。

 春先、少し驚く出来事があった。ログハウスのすぐ近くに森の木が倒れてきたのだ。幸いにも建物への被害はなかったが、倒れた木が道をふさいでいた。

 町の森林組合の人に聞くと、この辺りの木は防風林として植えられ、樹齢は約60年という。年齢的には私と同じくらい。植樹された木は自然に生えている木に比べると弱いそうだ。それでも倒れるのには理由がある。強風や環境の変化、病気など。倒木を切ったところ、中が腐っている部分があった。よく見ると、森には「猿の腰掛け」が生えている木がある。腐り始めた木や枯れ木を、分解し土に戻してくれる役目をするのが「猿の腰掛け」などのキノコ。元気そうでも「木が腐りかけてますよ」という自然からのサインだ。

 沐猴にして冠す

 これは中国歴史書の第一に位する「史記」にある故事から来ている言葉だ。「沐猴(もっこう)」とは猿のことで、猿が冠をかぶっているように、外見は立派でも中身が伴わない人物の例え。人は自分の都合のいいように物を見てしまうことが多い。見たいものしか見ないもので、外見だけ見て分かったと思ってしまう。でも、それではいけない。見えないものこそが実は大事なのだ。例えば、相手が一瞬見せる嫌な顔もサインであり、嫌でもやろうと思っているのか、本当に嫌なのかを酌み取ってあげないといけない。人と人が手をつなぐというのはそういうこと。自分勝手な思いで押しつけてもうまくいかない。

 監督時代にいつも感じていた。「これは自分がやりたいだけなのかどうか」と。試合のとき、そこに私心が入っていると絶対に成功しない。監督だって社長だって人を生かすのが仕事。自分本位ではなく、人が送ってくるサインを見逃さず、見えないものを見て判断することが重要。今の時代、いろいろなことが起こっている。でも、表面だけ見ていてはいけない。倒木がそう語りかけていた。

 ▽サルノコシカケ 1種類のキノコのことではなく、一般的に半円または扇状で木質の硬いキノコの総称。サルノコシカケ科はヒダナシタケ目に属する科の一つで「猿の腰掛け」とも表記する。食用ではなく、主に薬用として利用されるものが多い。古くからさまざまな病気の治療や健康維持に用いられ、煎じて飲むと薬効成分を摂取できる。一方で樹木病原菌の側面もあり、生木に生えると、その木を枯らしたり、腐らせたりする。ただ、枯れ木を分解し、自然界の栄養循環にも貢献する。

 ▽史記 中国前漢に司馬遷によって編さんされた歴史書で、二十四史の一つで正史の第一に数えられる。友人の李陵をかばったために皇帝・武帝の怒りに触れ、宮刑に処せられるという悲劇を乗り越えて完成させた。司馬遷が名付けた書名は「太史公書(たいしこうしょ)」だったが、後世に「史記」と呼ばれるようになった。司馬遷の死後も加筆、修正がされている。伝説上の黄帝から前漢の武帝まで、約3000年の歴史を記載している。

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