日本ハムCBO・栗山氏 春の芽吹きは厳しい冬を乗り越えた証 ふきのとう見て思い出す倉本聰さんの言葉

[ 2025年4月8日 06:00 ]

栗山英樹氏色紙

 侍ジャパン前監督で日本ハム栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=63)による連載「自然からのたより」は、春の訪れを告げる「ふきのとう」からの学びについて。雪が多く、厳しかった北海道の今年の冬も終わり、雪解けの栗の樹ファームでは、ふきのとうが元気な顔を見せた。雪の下でじっと耐え、寒さを乗り越えて春に芽を膨らませる。その姿は艱難辛苦(かんなんしんく)が人生で持つ大切な意味を示してくれる。

 苦しさが成長させる

 真っ白な雪に覆われていた栗の樹ファームも、ようやく雪解けが進んできた。グラウンドにある白いスタンドの近くでは、栗の苗木が太陽に向かって立ち上がっている。冬から春へ。大きく見え始めた大地から、顔を見せてくれたのはふきのとうだ。例年以上に雪が多かったこの冬を乗り越えて「今年も元気に頑張ります」と言いたげな姿に、春の訪れを感じさせられた。

 あれだけの寒さの中で、木々は秋から冬にかけて栄養をじっくり蓄えたりして春を迎える準備をする。最も春の到来を感じさせるふきのとうも、雪の下でじっと春を待つ。彼らは厳しい冬を乗り越えるから春に芽吹き、芽を膨らませる。そんな姿を見て、改めてかみしめた言葉がある。

 表舞台では本当の成長は出来ない

 これは脚本家の倉本聰さんの言葉だ。私が北海道に来てから、いろいろ教わり、心に残った多くの言葉の中の一つである。「人から称賛されたり、注目されたりする表舞台にいる時、人は絶対に成長しない。本当に、誰も分からないような裏で黙々とやる時間がなければ、人は前には進まない。その時間を人はどう取るのかが重要なんだ」。そう言われて、倉本さんはこう続けられた。「当たり前のことだけど、人は表舞台にいる時はなかなかそこに気付かないものなんだ」と。

 ふきのとうを見て思う。冬の間、雪の下で蓄えて、耐えて、そうしないと雪解けの大地から元気な顔を出せない。それは倉本さんの言葉を体現しているのではないか。みんな分かっていることなんだけど、苦しいとどうしても苦しさが先に立ってしまい、大事なことに気がつけない。そんな時、誰かに「この苦しさが成長させるんだ」と言われて「やっぱりそうだよな」と再び前を向く。そして人は成長していく。

 スタンドの近くの栗の苗木は、日本ハムの監督退任後の22年5月に、倉本さんから頂いた100本のうちの1本だ。春の到来。大切なことを改めて胸に刻む季節でもある。

 ▽栗の苗木 22年5月、かねて交流のあった北海道富良野市在住の脚本家・倉本聰氏から栗の苗木100本が贈られ、栗の樹ファームで植樹式が行われた。21年まで日本ハム監督を10年間務めた功労を称えるもの。「富良野塾」で若き演劇人を育ててきた倉本氏は、育成型球団で尽力した栗山氏に「シンパシーを感じる」として「監督を退かれた機に北海道民として感謝したかった。個人的に贈る功労賞です」と語った。苗木とともにさまざまな思いも受け継いだ栗山氏は「一生忘れない日」と感激していた。

 ▽ふきのとう キク科フキ属の多年草、ふき(蕗)の花のつぼみのこと。春の訪れを告げる山菜として広く知られ、3~4月に出荷されるふきのとうは春の山菜の代表格でもある。北海道から本州、四国、九州、沖縄に分布。日だまりで湿り気味な場所に自生し、水が豊富で風があまり強くない土地を好む。独特の苦みがあり、調理する際にはしっかりあく抜きすることがポイントで、天ぷらやフキ味噌などで旬を堪能できる。

 ≪野球と禅から「運」探求≫栗山氏と臨済宗円覚寺派の横田南嶺管長との共著「運を味方にする人の生き方」が、致知出版社から今年1月に発刊された。横田管長は栗山氏が深く尊敬する人物で、対談形式の同著のテーマは「運」。侍ジャパンを世界一に導いた名将と禅僧が「勝者の哲学」について語り合い、運を味方にする人の共通点は何かなど、野球と禅という異なる世界から深く探求する内容となっている。定価1500円(税抜き)。

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