プロ・アマの垣根払った半世紀の審判生活 谷村友一氏、殿堂入り 人柄見える日記と夫婦愛
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野球殿堂博物館は18日、本年度の殿堂入り3氏を発表し、東京都内で通知式を行った。特別表彰で殿堂入りした元セ・リーグ審判員の谷村友一氏(2022年他界=当時94歳)は審判員としてアマチュアからプロに転向して半世紀、プロ・アマの垣根を取り払った存在として評価された。
野球、そして審判として過ごした谷村氏の生涯を振り返ってみる。
1927(昭和2)年、父親の駐在先、ニューヨークで生まれた。両親はよくヤンキースタジアムなどで大リーグ観戦を楽しんだそうだ。「野球に興味を持ったのは母親のおへその穴から大リーグを見たこと」と話していた。5歳で帰国したが、同年、ベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグらのヤンキースがワールドシリーズを制している。
旧制同志社中(現同志社高)から同志社大に進み、二塁手として活躍。4年時は主将として1950(昭和25)年秋の関西六大学(現関西学生)リーグで優勝、最高殊勲選手に輝いた。
1951(昭和26)年、父、そして母が勤務した極東商事(現三菱商事)に入社。52年、京都クラブの二塁手として都市対抗に出場した。
勤務のかたわら大学、高校、社会人野球の審判員を務め、1955(昭和30)年からは8季連続で春夏の甲子園大会に出場。延長18回引き分け・再試合となった1958(昭和33)年夏の徳島商―魚津(富山)戦では三塁塁審を務めた。
この頃、「審判が自分の天職だと思うようになった」。同志社大先輩で監督も務めたセ・リーグ審判員、寺本秀平氏の勧誘もあり、1959(昭和34)年春に商社を退職。反対が予想されたため、周囲には内定までは一切口にせず、妻・壽美子さんには連盟との契約書を見せ「明日からプロ野球の審判になるから」と言って、驚かせた。
セ・リーグ入局初日の同年5月4日に始めた日記は大学ノートに「My Umpiring」と題し、2016年6月まで、計63冊に及んでいる。日々の行動記録や審判動作や判定への反省点などが記されていた。1990年ごろになると、身辺雑記や、交遊仲間と会食した店のはし袋などが貼られたりしていた。昨年10月、宝塚市の自宅で日記を“発見”した長女・米井好子さん(69)は「ここまで丁寧に記録しているとは」と驚いた。
谷村氏が心がけたのはセ・リーグ審判部長だった島秀之助氏(故人=野球殿堂入り)の「誠実」だった。谷村氏は「試合が終わり、帰路につくお客さんが試合のことは語り合っても審判は話題にしない。それが最高の仕事だと思う」と話し、黒子に徹していた。
1986(昭和61)年、59歳で現役を引退。通算3026試合出場(歴代17位)、日本シリーズ出場11回、オールスター戦出場6回。1973(昭和48)年10月22日、「勝った方が優勝」の大一番、阪神―巨人最終戦(甲子園)で球審を務めた。
1987年から技術指導員、1993年にはセ・リーグ審判総務部を新設し、岡田功氏とともに着任。後進の指導にあたった。さらに全日本野球会議で審判技術委員を務め、プロ・アマ双方で審判を務めた経歴から「プロ・アマの壁をなくすため、審判員から取り組んでいこう」と先頭に立った。交流はその後も長く続けた。1997年11~12月にはスポニチ本紙(大阪本社発行版)で『谷村友一のルールの達人』を50回連載した。
2002年初版の全日本野球協会発行『審判メカニクス・ハンドブック』の編集の尽力。今も版を重ね、「審判のバイブル」となっている。
通知式に出席した次女、松村和佳子さん(66)は「今ごろは天国で喜んでいることかと思います」と話した。生前交流があった島秀之助、筒井修、二出川延明(いずれも野球殿堂入り)……といった審判員の先人とも再会していよう。
谷村氏を支えた妻・壽美子さんも市岡高女(現大阪府立港高)時代に野球をしていたそうだ。結婚後は留守がちな夫を支えた。長女・好子さんは「父が母にプロになると事前に言わなかったのは分かってくれるという信頼があったからでしょう」と話した。昨年7月、谷村氏の一周忌法要を終えると、壽美子さんは1カ月後に老衰で後を追った。次女・和佳子さんは「母は命を使い切ったという感じでした。父を支えた母もきっと満足しています」と話した。
また、同志社大出身の殿堂入りは前身の同志社英学校卒で早大野球部の初代部長を務めた安部磯雄氏以来2人目となる。同志社大の後輩で同大監督も務めた漆崎(旧姓・安藤)亘さん(88)は「高潔な方でした。アマチュア時代を含めると何千試合と数えきれぬほど審判をされている。常に心は熱く、頭は冷静な野球人でした」と懐かしんだ。 (内田 雅也)
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