サッカー元日本代表・巻氏「世界観変える空間の駆け引き」 地元熊本開催・女子ハンド世界選手権で熱弁

[ 2019年9月17日 05:30 ]

ボールとポスターを手に大会を応援する巻誠一郎氏(撮影・中村達也)
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 元日本代表アスリートに聞くの巻――。「女子ハンドボール世界選手権」は11月30日から熊本県内3市5会場で行われる。開幕まで75日と迫り、地元開催を待ちわびるのが熊本県出身のサッカー元日本代表FW巻誠一郎氏(39)だ。妹の加理奈さん(37)は元ハンドボール女子日本代表で、今回は大会特別サポーターに任命された。女子ハンドボールに精通している巻氏が、世界が注目する大会の魅力を語った。

 ――今年1月15日に現役引退を発表し、16年間の選手生活を終えた。約8カ月が経過した現在は、どのような活動をしているのか。

 「いろんなことをやっています。何でも屋、自由人?(笑い)ですかね。社会性プラス(自分が)やりたいことのバランスを見ながらやっています。12期目になるサッカースクールのイベント企画や運営、サッカー教室や講演、障がいのある方の就労支援会社、取締役をしている放課後デイサービス事業、大学での血液やタンパク質の研究やトマトの作つけなどの農業…。熊本と東京を半々、行ったり来たりしています」

 ――忙しく駆け回る中、3月15日に県庁で蒲島郁夫知事から今大会の特別サポーターの任命を受けた。開幕を前に今の気持ちは。

 「世界が熱狂する祭典が熊本である。楽しみです。実は1997年の男子の世界選手権を高校(大津高)で見に行ったんです。日本代表戦を1試合見てあの雰囲気、世界を相手に戦う空気感を感じました。盛り上がりは今でも覚えてます」

 ――現役時代、試合を盛り上げるサポーターはどのような存在だったのか。

 「凄い後押し、勇気になります。ホーム、アウェー、環境面でアドバンテージがあって相手にプレッシャーをかけられます。お客さんに反応があると選手は乗るんです。一喜一憂し、リアクションしてほしいですね」

 ――2006年W杯ドイツ大会など日本代表として38試合に出場した。日の丸を背負う、国を代表するとはどのようなものなのか。

 「期待、圧力、責任など、相手以外とも戦わないといけない。それが宿命。覚悟がないと戦えない。選手はプレーすることで見える世界が変わると思う。貴重な経験ができると思います」

 ――妹の加理奈さんも熊本の実業団チーム・オムロンでプレーし、08年11月のバンコクでのアジア選手権の日本代表としても活躍した。観戦に行ったことはあるのか。

 「妹がオムロンに入社してから見に行くようになりました。正直、衝撃的でした。スマートな試合と思っていたがボディーコンタクトが凄い。“何や、これ?”と。サッカーよりもフィジカルコンタクトが多く、格闘技に近かったので面白いなと。妹の試合は時間の許す限り、見に行っていましたよ」

 ――特にどこが面白いのか。どういう視点で見ているのか。
 「ハンドボールは見えない空間の駆け引きが凄く多いスポーツだと思います。女子は、フィジカルで男子や海外選手に劣る分“力よりも工夫”なんです。攻守の切り替えの速さや、空間のポジション争いなどゲーム中に工夫をする感覚。ここがアスリート目線で面白いんですよね」

 ――父は元球児で長男の巻さんと次男はサッカー選手で、長女はハンドボール選手。巻家は球技一家と聞く。球技の魅力とは何?

 「球を扱う=自分の思い通りにならない。そこがベースですね。ミスが起きて当たり前。うまくいかないのが球技ですね。そのミスをチームで減らす努力、カバーをする。ミスをどれだけ減らすか、ですかね」

 ――最後に大会特別サポーターとしてメッセージを。

 「本当に価値のある、素晴らしい大会。身近で見られない素晴らしい機会。足を運んで見て、わくわくを味わって感じてもらえたらなと。自らのスポーツに対する感覚、世界観が変わると思います」

 ≪理事長務めるNPO法人で熊本地震の復興支援≫○…巻氏は、自身が理事長を務めるNPO法人「ユアアクション」で復興支援を行っている。J2熊本在籍時の16年4月に起きた熊本地震で自らも被災。車中生活をしながら救援物資を配布、子供たちとのサッカー教室を開くなど先頭に立ってきた。現在でも有名アスリートとともに復興募金や寄付を募っている。「地震で子供たちが夢を諦める、追わなくなっている中で、夢の追いかけ方のサポートのきっかけになっていけたら」。地元熊本県のために汗を流している。

 ≪「利き足は頭」≫◆巻 誠一郎(まき・せいいちろう)1980年(昭55)8月7日、熊本県生まれの39歳。大津高3年までアイスホッケー選手とサッカー部の“二刀流”。駒大サッカー部を経て、2003年に当時J1市原(現J2千葉)に加入。元日本代表監督のイビチャ・オシム氏に才能を見いだされた。東京V、熊本、ロシア・プレミアリーグのアムカルや中国リーグの深センでもプレー。05年に日本代表に初選出され、国際Aマッチ38試合出場8得点。06年W杯ドイツ大会ではブラジル戦に出場。J1通算207試合出場53得点、J2通算231試合出場16得点。「利き足は頭」と語り、1メートル84の長身を生かしたヘディングと豊富な運動量を誇った。

 ◇女子ハンドボール世界選手権 2年に1度の世界一決定戦。1957年に始まり、日本初開催となる今大会で24回目。2021年の次回はスペインで行われる。最多優勝はロシアの4回。前回のドイツ大会はフランスが制し、日本は16位。優勝国は東京五輪出場権と次回大会の出場権を得る。各地の大陸予選を勝ち上がった24カ国が出場。1次リーグは24チームが4組に分かれ総当たりで争う。各組の上位3チーム(計12チーム)が2次リーグに進出。2組で争われる2次リーグは各組上位2チームが準決勝に進出し、決勝は12月15日に行われる。

◇チケット情報 ☆申し込みの流れ (1)公式サイトにアクセス(2019女子ハンドでネット検索)(2)希望チケットを申し込む(3)申し込み完了メール到着(4)コンビニエンスストアで支払い(クレジットカード支払いは自動引き落とし) ☆会場 パークドーム熊本(メイン会場)、アクアドームくまもと、熊本県立総合体育館(熊本市)、山鹿市総合体育館、八代市総合体育館 ☆種類 1日券、会場パッケージ(1次リーグのみ対象)、ホスピタリティーチケット(パークドーム熊本のみ)、ハッピーアワーチケット(平日の全会場、土日の一部会場限定で販売。2試合目以降に入場可能で各会場のファンゾーンで使えるクーポン券付き) ☆問い合わせ先 チケットカスタマーセンター=(電)050(5433)1080

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