羽生、リンクへ帰還 闘志全開100%「暴れ回る炎になれている」

[ 2019年3月20日 05:30 ]

会見で笑顔を見せる羽生結弦(撮影・小海途 良幹)
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 羽生、たぎる――。20日開幕のフィギュアスケート世界選手権の公式練習が19日、会場のさいたまスーパーアリーナで行われた。2年ぶり3度目の頂点を狙う男子の羽生結弦(24=ANA)は、昨年11月のGPシリーズ・ロシア杯以来122日ぶりに試合会場で汗を流した。計24本の4回転ジャンプで一気にギアを入れた絶対王者は、因縁の4回転ループ成功で優勝を目指す。20日は女子ショートプログラム(SP)などが行われる。

 その一瞬一瞬が、羽生の五感を刺激した。本番リンクで行われた午前の公式練習。昨年11月17日、GPロシア杯のフリーから122日ぶりとなる試合会場での調整は、自然と笑みがこぼれた。会場が醸し出す雰囲気や氷の感覚…。右足首の負傷で実戦から離れて4カ月がたつが、35分の練習時間が忘れかけた感覚を呼び起こした。

 「試合を見ているだけの時期は凄く悔しかった。(闘志の)油はあるし、火もあるんだけど、ちっちゃい部屋の中でずっと燃えている感じだった。やっと試合の会場に来て、今は大きな箱の中で光って暴れ回る炎になれている」

 銀盤に舞い戻った絶対王者は、凄みを増していた。本番会場でループ、サルコー、トーループの3種類の4回転を計12本成功。羽生しかできない超高難度の4回転トーループ―3回転半の連続技もクリーンに決めた。午後の練習でも4回転を12本跳び、計24本で帰国2日目の調整を終了。「感じたかったことを一つ一つ感じることができた。ミッション、コンプリート(任務完了)」。ギアが一つ上がった瞬間だった。

 3度目の頂点へ、因縁の4回転ループが鍵となる。右で強く踏み切るループは右足首の負傷が続く羽生には負担が大きい。昨年の平昌五輪では回避。今回も4回転ループの転倒が原因だった。それでも、このジャンプを越えるべき“壁”と捉える。羽生は「ループを跳ばないといけない使命感が物凄くある」と言い、オーサー・コーチも「フリーで勝負する必要がある」と理由を明かす。4回転をSP2本、フリーでは冒頭にループを組み込み4本。計3種類6度の必勝構成で臨む。

 今季も困難の連続だった。年明けから氷上練習を始め、3週間ほど前にループを「50本に1本」着氷。衝撃に耐えうる筋力も鍛え、2%の成功率から一気に完成度を高めた。シーズン前に描いた理想とは違う。だが、逆境こそ成長の源。「胸を張って100%と言える状態」までピークを合わせてきた。

 21日のSPから戦いが始まる。「この凄く煮えたぎっている勝ちたい欲求に対して素直に勝ちを獲りたい」。羽生結弦のライバルは、やはり羽生結弦。自分に打ち勝ち、勝負にも勝つ。

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