ラグビー日本W杯あと半年 33歳右プロップ山下、経験武器に代表“逆転切符”狙う男は異彩キャラ

[ 2019年3月20日 11:00 ]

16日のレッズ戦でスクラムを組む(左から)サンウルブズの山下と坂手(撮影・吉田 剛)
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 アジアで初めて開催されるラグビーの祭典、ワールドカップ(W杯)日本大会開幕まで、20日であと半年となる。50人を超えるW杯日本代表候補選手による、31人の最終登録メンバーを懸けた争いも佳境に。そんな中、すでに2月初旬からスーパーラグビー(SR)のサンウルブズで実戦を重ねている選手が株を上げている。15年W杯代表の右プロップ山下裕史(33=神戸製鋼)ら、赤丸急上昇の“ダークホース”がポジション争いを激しくする。

 帰ってきた男が存在感を増している。15年W杯以後は代表から遠ざかっていた山下だが、トップリーグでの活躍が認められて昨秋3年ぶりに復帰。11月3日のニュージーランド戦でも先発した。年明けからはサンウルブズで5試合連続出場中。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)も「山下には経験がある。年齢はいっているが、あのようなパフォーマンス(勝利した3月2日のチーフス戦)をしたのは驚いた」と高い評価を与える。

 4年前には、あの南ア戦で歓喜の瞬間をピッチ上で迎えた。当時からセットプレーの強さには定評があったが、今の山下はボールを持った場面の動きも目立つ。新たな強みが加わったが、本人は「システム通りに動いているから、そこが空く、という具合。僕が打開したわけではない」と謙遜する。それでも「調子は悪くない」と33歳はニヤリと笑う。

 もちろんスクラムの屋台骨としての存在感も不変だ。相手に応じて組み方や押す角度の調整が必要とされる中、大小の舞台でさまざまな相手と何千、何万と押し合いを重ねた経験値という引き出しが最大の武器となる。「経験だけでラグビーをやるわけではないが、スクラムの組み方は経験があった方がいい」。ピッチ上のコーチ役として、周りの選手からの信頼も絶大だ。

 こんなエピソードもある。昨年10月の宮崎合宿中、食事会場でジョセフHCとすれ違う際、「うえ~い」と声を発してフランクにハイタッチを求め、若手選手を驚かせたという。ほぼ初対面だった指揮官も恐れぬ度胸と、周りに溶け込むコミュニケーション能力の高さ。一方で山下自身は「緊張しい」と自己分析し、「試合前はロッカーで“やればできる。絶対できる”とつぶやいてます」。多士済々の代表候補の中でも、そのキャラクターは際立っている。

 「11年W杯で代表を逃した時よりも、神戸製鋼でリザーブの時の方が“なんでやねん”と思うし腹も立つ。ただただラグビーをしたい。変態ですね」と豪快に笑うように、2度目のW杯は目の前の1プレー、1試合に死力を尽くした先にある。本人には「全然見えていない」という大舞台だが、周囲の期待は日に日に高まるばかりだ。

 ◆山下 裕史(やました・ひろし)1986年(昭61)1月1日生まれ、大阪府出身の33歳。大阪・都島工高からラグビーを始め、京産大を経て08年に神戸製鋼入り。09年のカザフスタン戦で日本代表初キャップを獲得し、通算51は歴代14位タイ。15年W杯では全4試合に出場した。16年にはチーフスでもプレー。1メートル83、122キロ。ポジションは右プロップ。

 ▽右プロップ争い 韓国出身の具智元(ホンダ)は山下に負けないサイズの持ち主で、24歳と若い。昨秋もケガ明けのイングランド戦で先発するなどジョセフHCの信頼も厚く、3番の筆頭候補だ。具を追い掛けるのが山下、浅原(東芝)、ヴァル(パナソニック)。2月のチャリティーマッチで豊富な運動量が光った23歳の木津(トヨタ自動車)はノンキャップながら勢いがある。枠は2、ないしは3。各選手が強みをどうアピールするか。

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