貴ノ岩引退 暴行で引責、元貴乃花親方に「申し訳ない」

[ 2018年12月8日 05:30 ]

引退届を受理され会見に臨む貴ノ岩(撮影・会津 智海)
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 大相撲の東前頭6枚目・貴ノ岩(28=千賀ノ浦部屋)が7日、東京都台東区の同部屋で会見し、現役引退を表明した。4日夜に巡業で訪れた福岡県行橋市の宿舎ホテルで、付け人の三段目・貴大将(23)に暴行を振るったことの責任を取った。午後に日本相撲協会に引退する意思を伝え、八角理事長(元横綱・北勝海)が承認。暴行からわずか3日での最悪の幕切れに、前師匠の元貴乃花親方・花田光司氏(46)も厳しい言葉で最後の教えを説いた。

 会見開始時刻の午後7時半。師匠の千賀ノ浦親方(元小結・隆三杉)とともに姿を現した貴ノ岩は、100人を超える報道陣が詰めかける稽古場で、硬い表情のままフラッシュを浴びた。冒頭の10秒間、師弟で頭を下げると、貴ノ岩は被害者の貴大将や親族らに陳謝し、「深く反省し、責任を取って、現役を引退させていただきます」と表明した。

 きっかけは風邪薬だった。4日夜、巡業先のホテル自室で、貴大将が「飲まなければならない(風邪)薬を忘れた」ことに腹を立て、顔を4、5発殴った。翌朝、腫れた顔の貴大将は巡業開催地の支度部屋に荷物を置いて姿を消し、約1時間後に戻ると暴行が発覚した。すぐに2人は巡業を離脱し、別々のルートで帰京。それぞれの聴取前に口裏合わせができないように、貴大将は東京に戻っても翌5日の聴取が終わるまで師匠に携帯を預けるようにと言われるほど、協会は厳しい追及を見せた。

 部屋での謹慎となった貴ノ岩は6日夕方、都内の自宅から千賀ノ浦部屋に移動。その頃に引退する意思を固めた。気持ちを伝えた親方から「まだやめないで頑張ろう」と引き留められたものの揺るがず。貴大将を自室に呼び、「ごめんな。俺、あの時どうにかしていた。本当に悪かった。俺、もう引退するから」とわびたという。弟弟子の幕下・貴公俊にも「今までありがとう」と感謝と伝えた。

 昨年10月末に発覚した元横綱・日馬富士による暴行事件の被害者が貴ノ岩。加害者は引責引退したが、今度は自ら過ちを犯し「自分の気持ちの弱さ、自覚が足りなかった」と同じ道をたどることになった。元貴乃花親方が育てた関取第1号。早くに両親を亡くしたこともあり、長く目をかけてもらってきた前師匠を裏切る行為に「感謝の気持ちと迷惑をかけて申し訳ない気持ちと両方あります」と会見では目を潤ませた。

 思い出を聞かれ「仲間と稽古で一緒に汗を流して、日々ぶつかり合って汗を流してきたこと」と振り返ったが、もう、その場所に戻ることはできない。土俵が育ててくれたその大きな手が、取り返しのつかない事態を招いてしまった。

 ◆貴ノ岩 義司(たかのいわ・よしもり=本名アディヤ・バーサンドルジ)1990年2月26日生まれ、モンゴル・ウランバートル出身の28歳。16歳だった06年に鳥取城北高に相撲留学。08年世界ジュニア選手権中量級優勝などの成績を残し、08年に貴乃花部屋に入門。09年初場所で初土俵を踏んだ。12年名古屋場所で新十両に昇進し、貴乃花親方が育てた初の関取となった。14年初場所で新入幕。17年初場所で自身唯一の金星を白鵬から奪った。今年秋場所後に千賀ノ浦部屋に転籍。殊勲賞1回、敢闘賞1回。最高位は前頭2枚目。得意は右四つ、寄り、投げ。1メートル82、150キロ。血液型O。

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