アジア大会カヌー・スラローム連覇 ハネタクの“不動心”はみんなのお手本

[ 2018年8月24日 14:19 ]

アジア大会カヌー・スラローム男子カナディアンシングルで連覇をした羽根田卓也と、スラローム女子カヤックシングルを制した矢沢亜季は現地のボランティアに写真を求められる 
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 ハネタクは勝つべくして勝った。22日のジャカルタ・アジア大会カヌー・スラローム男子カナディアンシングルで、羽根田卓也(31=ミキハウス)は連覇を果たした。16年リオデジャネイロ五輪で、アジアで初となる銅メダルを手にした実力者。実績は飛び抜けている。しかし、簡単な戦いではなかったのは事実だ。

 コースの水流が弱く、技術よりもパワーが求められて接戦になった。試合までにもいくつも障害があった。移動のトラブル、ホテル周辺が騒がしく睡眠不足に陥ったこと、下痢など、マイナス要素はたくさんあった。それでも、端正な顔立ちの第一人者は、不平不満を口にすることはなく、結果を残した。

 「生活のリズムは狂ったけど、いつも8時間寝られて、おいしい物を食べられて、試合ができるわけじゃない。ここはこういうところと思って挑みました」

 ああ、そうだった。ハネタクは痛い、かゆいを言わない人だった。1月にしたインタビューで、試合に臨む心境をこう話していた。

 「ハプニングを味方にしたり、逆に利用するぐらいの気概がないと、世界では戦えない。何が起こるか分からないから、僕はルーティンをつくるのが好きじゃない。必ずしも試合前日にトンカツを食べられるわけじゃない。勝負パンツがなくなるかもしれない。そんなところに神経を使いたくない。“こうしなければいけない”というのを作りたくない」

 リオ五輪も、レース2日前の公式練習でポンプが故障して予定のメニューができなかった。予期せぬアクシデントに襲われながら「しょうがない。こういうこともある」と開き直り、快挙に結びつけた。もちろん、豊富な練習量があったのは言うまでもないが。

 環境に左右されて結果を出せない選手は少なからずいる。練習場の不備、宿泊施設への不満、審判の判定など、調子を狂わせる要因はたくさんあるだろう。誰だって万全の状態で挑みたい。しかし、そうさせてもらえないのが国際大会だ。

 不都合があれば意見や主張はすべきだが、一方で現実を受け入る懐の深さも大事。心情は分かるけれども、言い訳材料にしていては、それまでだ。どうすれば自分の力を発揮できるのか――。羽根田の“不動心”には、そのヒントが隠されている。(倉世古 洋平)

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2018年8月24日のニュース