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桐生、9秒98への歩み 感覚派VS理論派コーチ 対立、不和乗り越え

陸上・日本学生対校選手権第2日 ( 2017年9月9日    福井県営陸上競技場 )

会見で、土江コーチ(左)と並んで笑顔をみせる桐生
Photo By スポニチ

 歴史的快挙を達成した桐生祥秀。小学、中学、高校、大学それぞれの戦いを桐生本人や関係者の証言を基に振り返った。

 ◎小学生 サッカー少年 GKで市選抜チームに

 小学校はサッカー少年だった。1年生で滋賀県彦根市の「プライマリーサッカークラブ」に入った。「最初はFWだった」が、走力を買われてサイドバックをした経験もある。チームのGKがケガをした影響で高学年でGKに転向。市選抜チームに選ばれたものの、本人いわく「あまりうまくありませんでした」という。ただ、GKでありながらも足の速さは際立っていたようで、高学年の頃に「ジェット桐生」のあだ名がついていた。

 ◎中学生 目立たない存在 “坂ダッシュ”で飛躍

 4歳上で陸上をしていた兄・将希(まさき)さんの影響を受け、彦根市立南中から陸上を始めた。同校陸上部で指導した、箱根駅伝の経験がある億田明彦教諭は「最初は細くて背も低く、目立った存在ではなかった」と振り返ったが“坂ダッシュ”が飛躍のきっかけになった。学校近くの上り坂でスタートダッシュの力強さを身に付けた。下り坂ではスピードを殺さずにリラックスして走る感覚を体に染み込ませた。

 その結果、1年時に12秒台だった100メートルのタイムは、2年春に11秒25を出すまでになった。もう一人の顧問、大橋聖一教諭は「2年冬に故障をして十分な練習ができなかったにもかかわらず、3年の4月に10秒台を出した」と型破りな資質を懐かしんだ。

 ◎洛南高 恩師・柴田氏が驚いた超高速ピッチ走法

 日本最速のスピードを生むのは、超高速ピッチ走法にある。京都・洛南高時代の恩師、柴田博之氏が「あの高速の足の回転は類いまれ」と評する。身長1メートル76と決して大柄ではないが、1秒間で最大5歩にも達する。足の回転数は世界歴代2位の9秒69の記録を持つタイソン・ゲイ(米国)と同じレベルだ。短い接地時間でも効率的に推進力につなげ、最大で身長の約1・3倍に達する歩幅も武器である。恩師は「あの子らしいレースをした。最後の10メートルの走りを見たら本気で狙っているんだろうなと感じた」と語った。

 ◎東洋大 土江コーチ「与えるから引き出す」で築いた信頼関係

 東洋大の土江寛裕コーチには忘れられない桐生の言葉がある。入学当初のことだ。指導をしても、言うことを聞かない。外部の人間の助言を頼っているようだった。それをただしたときにこう返された。

 「“土江先生は9秒台を出させると言わなかった”と言うのです。だから信用をしなかった、と」

 なぜ9秒台を約束できなかったのか。土江コーチは五輪に2度出場したスプリンター。現役終盤は早大大学院に通い、走りを科学的にアプローチした。研究者として、無意識のうちに軽はずみな発言にブレーキをかけていた。

 最初の1年は関係が冷え込んだ。「口をきかなかった時期がある」と桐生が明かすほどだ。感覚派の桐生には理論を押しつけても聞いてくれない。コミュニケーションを取り「何をやりたがっているか。与えるから引き出すことを考えた」。信頼関係を築き、今春「今は能力も準備もできている」と9秒台を明言するようになった。

 土江コーチは現役時代も今も自動車のナンバーは「999」だ。陸上人生の悲願を教え子が成し遂げ、「順風満帆ではなかった4年間。東洋のユニホームを着ている間に9秒台を出せて、感無量、感謝です」と涙が止まらなかった。

[ 2017年9月10日 08:18 ]

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