日馬負けたけどV「俺、優勝だよな?」千秋楽全員コケて決まった

[ 2015年11月23日 05:30 ]

優勝し、関係者とバンザイする日馬富士

大相撲九州場所千秋楽

(11月22日 福岡国際センター)
 休場明けの横綱・日馬富士が13勝2敗で2年ぶり7度目の優勝を飾った。自らの出番では稀勢の里に寄り切られたものの、2敗で追っていた横綱・白鵬、平幕・松鳳山も敗れた。優勝を争う力士が全員敗れての優勝決定に苦笑いしながらも、伊勢ケ浜部屋の結束力で手に入れた美酒に酔いしれた。優勝に絡む力士が千秋楽で共倒れし、決定戦にもならずに賜杯の行方が決したのは11年5月の技量審査場所の例があるが、珍しい形となった。
【千秋楽取組結果】

 待ち焦がれた歓喜の瞬間、日馬富士はすぐ反応できなかった。稀勢の里に敗れて引き揚げた東の支度部屋。決定戦に備えて締め込み姿のままモニターを見つめた。結びで白鵬が鶴竜に寄り切られた。自身の出番前に松鳳山も敗れている。自らの優勝が決定したのに表情は硬い。「俺、優勝だよな?」と周囲に確認してようやく頬を緩めた。「いつも勝って優勝だから。不思議な感じがします」と照れ笑い。土俵下に落とされ悔しさのあまり、しばらく両手をついて動けなかったのが数分前。どう表情をつくればいいのか困惑した。

 優勝インタビューでは目を潤ませ「忍ぶ2年間でした」という言葉に力を込めた。相次ぐケガで13年九州場所を最後に優勝から遠ざかった。前2場所を休場し、成績次第で進退の決断を迫られる苦境。不安は尽きず「怖さはある」と弱気な言葉も出た。2日目は大砂嵐に左上手で振り回されて初黒星。それでも「一日一番の積み重ね」と自らを鼓舞。9日目の勢戦で右喉輪で突き起こすなど本来の取り口を取り戻し、連勝街道を走った。

 “チーム伊勢ケ浜”による優勝だ。照ノ富士が14日目に白鵬を破り、千秋楽は安美錦が松鳳山を下し、兄弟弟子がアシスト。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)は審判部長として日馬富士に優勝旗を贈呈し、涙腺が緩んだ。「やっと優勝してくれた。ずっと待ってたよ。チームで、いい感じでやってくれた」。今年夏場所は日馬富士が白鵬を破り、照ノ富士の初優勝に貢献。部屋全員でライバルに立ち向かう体制が確立されている。

 自身も31歳の年齢を自覚した調整と節制を心がけた。稽古はストレッチに時間をかけ、夜の町に繰り出す回数を減らした。「酒は楽しい時に飲むもの。お祝いがあって飲むのが酒なんだよ」。この日ばかりは心ゆくまで美酒に酔いしれた。

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2015年11月23日のニュース