当初試算は3462億円 新国立総工費、招致直前に開閉式断念案

[ 2015年8月19日 22:22 ]

 白紙撤回された新国立競技場のデザインを実現すると総工費は3462億円に上ると、2013年7月に設計会社の共同企業体(JV)が試算していたことが19日、日本スポーツ振興センター(JSC)が作成した資料で分かった。JSCは12年にデザインを国際公募した際、1300億円と想定しており、当初の甘い見通しがあらためて浮き彫りとなった。

 JSCが20年東京五輪の招致が決まる直前の13年8月、総工費を1300億円に近づけるため、開閉式屋根設置の見送りなどを検討していたこともJSC関係者の話で判明。JSCは3462億円の試算を受け、解体費を含め1358億~3535億円の五つ以上の見直し案を文部科学省に示していた。

 コストが最も低い案を採用しなかった理由についてJSC幹部は「招致活動の最中で、決断しづらかった。建築家ザハ・ハディド氏の案でプレゼンテーションをしており、ひっくり返すのは難しかった」と話している。

 資料は新国立競技場問題に関する19日の文科省第三者委員会で示された。試算は、開閉式屋根のあるハディド氏のデザインを実現し、各競技団体などの要望を全て盛り込むことが前提とされた。

 文科省によると、事務方が下村博文文科相に試算や見直し案を報告したのは約2カ月後。重要な情報が早期の抜本見直しに生かされなかった。

 その後JSCは建物の面積や高さを見直して、14年の基本設計段階で1625億円に抑えたが、最終計画では2520億円となった。巨額過ぎるとの批判を招き、計画撤回に追い込まれた。

 またJSCの資料で、施工予定のゼネコンは今年に入って3088億円、JSCと設計会社側は2112億円の試算を出していたことも明らかになった。文科省はこれまで、それぞれ3千億円超、2100億円程度と説明していた。

 19日の会合後、第三者委の柏木昇委員長は記者団に、これまでに文科省やJSCの担当者ら十二、三人から聞き取り調査したことを明らかにした。下村氏へのヒアリングは、調査の最終段階で実施するとした。

 第三者委は、二転三転した総工費のほかデザインを選んだ経緯や責任の所在を調べ、9月中旬に報告書をまとめる。

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2015年8月19日のニュース