普段は温厚な男が…代表合宿での“乱闘”は闘争心の表れ

[ 2015年8月19日 10:00 ]

15日の強化試合・世界選抜戦でプレーするカーン・ヘスケス

 「真犯人」の名前を聞いて、ほう、と思った。9月開幕のラグビーW杯へ準備を進める日本代表の宮崎合宿で、先週の練習中に乱闘が勃発した。現場に居合わせなかったが関係者に聞いたところ、初めにWTBカーン・ヘスケス(宗像サニックス)が他の選手を殴ったことが原因とのことだ。

 ラグビーの練習なので、当然カーッとなることもある。世界選抜戦(秩父宮)前日の14日にリーチ主将(東芝)が「ケンカはいいこと」と言ったように、8月31日の最終メンバー発表へ向けてポジション争いも佳境を迎え、内なる戦いも激しさを増してきた証拠だろう。ヘスケスは先発したその世界選抜戦でも、相手選手につかみかかるシーンがあった。

 ただ、私の知る限りニュージーランド出身の30歳のその男は、普段は温厚な選手だ。グラウンド内では高校時代にNo・8やフランカーのポジションで培ったコンタクトの強さで、ゲインを突破するのを得意とする。20―45で敗戦した先の試合ではチーム唯一のトライを奪ったが(もう1トライは認定)、それ以上に目立ったのは積極的なボールへの働きかけだった。バックスの「端っこ」であるウイングは、ただパスが回ってくるのを待つだけでは仕事にならない。動きやコールでボールを積極的に呼び込むこと。それができて、初めて自分の強みを生かせる。5月9日の韓国戦(レベスタ)後に「コミュニケーションが課題」と言っていたが、完全に克服した証拠を見た思いだった。

 トライゲッターであるウイングは花形ポジション。代表でも藤田(早大)、福岡(筑波大)、山田(パナソニック)と、やはり華のある選手が並ぶ。その3人と、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチが「3」と公言するW杯メンバーのウイング争いを繰り広げるヘスケス。宮崎での「パンチ」は、なりふり構わずジャージーを奪いに行く気持ちの表れなのだろう。 (阿部 令)

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2015年8月19日のニュース