遠藤 リスク承知の夏場所強行出場「思ったより動けている」

[ 2015年5月6日 05:30 ]

負傷後初めて若い衆を相手に稽古する遠藤(右)

 大相撲の春場所で左膝前十字じん帯と外側半月板を負傷して途中休場した西前頭9枚目・遠藤(24=追手風部屋)が5日、夏場所(10日初日、両国国技館)に出場する意向を表明した。埼玉県草加市内の追手風部屋で行った朝稽古後に明言。手術を回避しての強行出場に対して厳しい見解を述べる専門家もいる中で、角界きっての人気力士はあくまでも前だけを向いて早期復帰を決断した。

 初日が5日後に迫った朝稽古。遠藤は3月12日に左膝を負傷して以来54日ぶりに相撲を取った。膝にサポーターをつけずに土俵内に入ると幕下4人と12番取って危なげなく全勝。立ち合いからの一気の押しや突っ張り、左四つに組んでの出し投げなど多彩な攻めを見せた。ぶつかり稽古では胸を出して左足で踏ん張る場面も。そして稽古後に「思ったより動けている。どんどん良くなることを想定し、悪くなることも考えないわけではないが、いいふうに、いいふうに考えて。これだけ体が動いているし出る方向で行く」と出場の意向を表明した。

 春場所5日目の松鳳山戦で負傷し「左膝の前十字じん帯損傷と外側半月板損傷で2カ月の休業を要する」との診断書を出して途中休場。その後、前十字じん帯は部分断裂していることが判明した。だが、右膝前十字じん帯を断裂した日大3年時にメスを入れずに復活した経験もあり、手術回避を選択。稽古を再開した4月中旬は四股を踏むたびにぐらついたが、連日稽古後に一人だけ残って汗を流し、少しでも膝のぐらつきを軽減すべく下半身強化に努めた。5月に入ってからは立ち合いの当たりを開始。そして「きょう無理だったら無理だと思っていた」と実戦稽古を終えたばかりの「今」決断した。手術すれば半年以上のブランクは必至だっただけに師匠の追手風親方(元幕内・大翔山)も「普通じゃありえない」と説明した。

 万全ではない中で幕内で15日間戦うということは悪化へのリスクを背負うことであり、強行出場に違いない。まだ24歳と若く、手術をしないまでも1場所休場して十両から再スタートする選択肢もあった。だが、今年の目標を三役に掲げるホープは「最初から諦めるのではなく出るつもりでやってきた。気を引き締めていきたい」と言った。慎重な治療より早期復帰への意思を優先させた判断は正しいのかどうか。それは、入門以来初の大銀杏(いちょう)姿で登場する夏場所が始まれば、おのずと見えてくる。

 【遠藤の負傷経過】

 ▽3月12日 春場所5日目に松鳳山を突き落としで下した際に負傷。大阪府堺市内の病院で検査を受け、左膝の半月板と前十字じん帯を損傷し、全治2カ月であることが判明。そのまま入院。
 ▽13日 「左膝の前十字じん帯損傷と外側半月板損傷で2カ月の休業を要する」との診断書を提出し6日目から休場。
 ▽17日 追手風親方が前十字じん帯について「医者からほぼ断裂しているだろうと言われた」と話した。
 ▽23日 退院。大阪を離れて埼玉県草加市の追手風部屋に戻る。
 ▽4月8日 師匠の追手風親方(元幕内・大翔山)が手術をしない意向を明言し、稽古場で上半身だけの運動を再開していることも判明。
 ▽10日 稽古場で四股を再開。
 ▽28日 四股に加え、てっぽう、すり足も再開していることが判明。
 ▽29日 再検査を受けて異常なし。
 ▽5月5日 夏場所出場の意向を表明。

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