沙羅、まさかのメダルなし…不利な追い風、テレマーク不発

[ 2014年2月13日 05:30 ]

メダルに届かなかった高梨はうっすらと目に涙を浮かべ会場を後にする

ソチ五輪ジャンプ女子個人ノーマルヒル

(2月11日)
 金メダル候補がまさかのメダルなしに終わった。今季W杯で13戦10勝の高梨沙羅(17=クラレ)は1回目に100メートルで3位、2回目は98・5メートルで合計243・0点の4位。不利な追い風を受け、改善に取り組んできたテレマーク姿勢も不発で、初五輪は涙で幕を閉じた。伊藤有希(19=土屋ホーム)は7位、山田優梨菜(17=白馬高)は30位だった。カリーナ・フォクト(22=ドイツ)が103メートル、97・5メートルの合計247・4点で初代五輪女王に輝いた。

 上着を羽織ることもせず、ビブスを中途半端に首にぶら下げたまま、最後のフォクトのジャンプをじっと眺めていた。この時点で3位。フォクトの金が決まった瞬間、高梨は勝者に精いっぱいの拍手を送ったその手で、すぐに瞳にこみ上げてきたものを拭った。

 取材エリアでは「今まで支えてくれた人たちに、いいところを見せられなくてとても残念」と気丈に話したが、全日本の山田いずみコーチのもとに歩み寄り「メダルを見せてあげられなくて残念」と小さな声で謝ると再び涙がこぼれた。

 「自分の納得できるジャンプが飛べたらもっと楽しかったのかな」。どこかで歯車が狂い、最後までかみ合わなかった。前日、山田コーチとは「少しのミスは気にせず飛んでいこう」と話し合っていた。しかし、2回とも不利な追い風でのジャンプを強いられ「後ろから叩かれる感覚があった」と課題のテレマーク姿勢を決められなかった。緩やかに傾斜が変わる助走路の感覚もつかみきれず、他の選手に比べて助走速度も伸び悩んだ。

 「普段は言わないけど、ここに来て何度も勝ちたいと言っていた」。山田コーチは高梨の硬さを感じ取っていた。何度も口にしてきた「女子ジャンプの先輩たちへの感謝」の思い、ジャンプ界では異例となる多くの大型個人スポンサー契約、ファンやメディアの注目。「プレッシャーより力に変えて頑張ってこられた」。だが、その力は最後の最後で「いいところを見せたかった」という力みに変わった。

 山田コーチは周囲からの注目や期待について「勝ち続ける以上はそういう立場になるのは仕方がない」と語った。トップアスリートの宿命ならば、それは受け入れるしかない。「平常心を保っていたつもりだけど思い通りに飛べなかったのは自分のメンタルの弱さ。もっともっと強くなりたい」。4年後の金メダルを目指して、高梨の心も定まった。

 ▽ジャンプ競技の採点 K点(60点)を基準とする飛距離点と、空中やテレマークの姿勢などを総合して採点する飛型点(最高60点)を合計。さらに、今大会から風向きやゲートの高さによっての加点と減点も導入された。風向きによる加点と減点はウインドファクターと呼ばれ、5カ所で計測した平均の風速に応じて不利な追い風なら加点、有利な向かい風なら減点される。今大会では向かい風であれば風速1メートルごとに7点減点、追い風であれば8.48点加点される。

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