吉田 レスリング存続直訴は封印…笑顔で五輪招致役

[ 2013年3月7日 06:00 ]

施設見学で東京ビッグサイトを訪れたIOC評価委員を迎える吉田沙保里。中は伊調馨、左は小原日登美

 20年夏季五輪の開催地決定に向けた国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員会による東京の現地視察3日目が6日、都内で行われた。東京ビッグサイトではレスリング女子55キロ級で五輪3連覇の吉田沙保里(30=ALSOK)が、評価委員会メンバーと笑顔で握手して招致実現へアピール。レスリングは20年五輪で除外危機にあるが、吉田はIOC側に直接、競技の五輪存続を訴えることは控え、PR役に徹した。

 TOKYOの夢をかなえるため、言いたいことをグッとこらえ笑みをふりまいた。評価委員会が訪れた東京ビッグサイトでは、前日(5日)の時点で出席予定のなかった吉田が、都合がついたため電撃参戦。ヘアスタイルもメークもバッチリ決め、評価委員会メンバーと笑顔で握手をかわした。

 差し出した右手には、複雑な思いが込められていた。2月のIOC理事会で、レスリングが20年五輪で除外される危機に直面した。IOCには競技をアピールしたいが、招致を考えた場合、IOC理事会の決定に不満を示すのはマイナスに働く可能性がある。あいさつした国際連盟(FILA)副会長を務める福田富昭日本協会会長(71)は「非常にデリケートな立場」と吐露。ロンドン五輪男子フリースタイル66キロ級金メダルの米満も、「きょう(6日)は招致のことしか頭になかった」と話した。

 声高にレスリング存続を叫ぶことはできなかったがIOC側から貴重な意見を聞くこともできた。吉田も出席した3日のウエルカムパーティー。吉田によると、2月のIOC理事会で投票権を持っていた評価委員会のクラウディア・ボケルIOC委員(ドイツ)から、「復活を祈っています」と言われ、他の委員からも「俺は投票していないから、憎まないでね」と声をかけられたという。

 この日は吉田、米満、伊調、小原とロンドン五輪の金メダリスト4人が集結。「4人がいることは、何らかの印象に残ったと思う。心で分かってくれればいいかな」と福田会長は話す。レスリングが五輪残留の場合、東京ビッグサイトが会場になる。「もちろん、この場所に戻ってきたいですよ!」と吉田は力を込めた。評価委員会による会場視察最終日。招致はスマイル、競技存続は金色の存在感で、最強レスラーがアピールした。

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2013年3月7日のニュース