貴ノ岩、関取初勝利“名付け親”は美輪明宏

[ 2012年7月10日 06:00 ]

政風(左)を破り初白星をあげた貴ノ岩

大相撲名古屋場所2日目

(7月9日 愛知県体育館)
 貴乃花部屋から初の関取昇進を果たした十両・貴ノ岩が政風を寄り倒して「関取初勝利」。師匠の貴乃花親方が06年2月に父の二子山親方(元大関・貴ノ花)から部屋を継承して約8年半。モンゴル出身の22歳が記念すべき第一歩を踏み出した。横綱・白鵬は先場所で平幕優勝した旭天鵬を豪快なすくい投げで退けて2連勝。初日は安泰だった6大関のうち、この日は琴欧洲が豪栄道の下手投げに屈した。

 十両力士として初めて勝ち名乗りを受けた貴ノ岩は誇らしげに花道を引き揚げた。敢闘精神あふれる力士アンケートで十両1位となる気迫の取り口で、貴乃花部屋から誕生した初の関取として初の勝利。支度部屋では「勝ててよかった」と安ど感いっぱいの表情を見せた。

 大横綱だった師匠の教えが染みこんだ粘りと攻めの相撲だった。立ち合いは政風に攻め込まれたものの、稽古で鍛え抜いた下半身を使って土俵際でグッと我慢。左前みつを握って深く右を差し、そこを勝機とみるや土俵外まで一気に前に出て寄り倒した。

 「貴ノ岩」というしこ名には、ある秘密が隠されていた。08年秋だった。師匠と2人で母校(鳥取城北)のある鳥取から上京してきた羽田空港。到着ゲートで美輪明宏(77)とばったり会ったという。あどけなさの残る18歳の青年を見た美輪は親交のあった貴乃花親方に「岩のようですね」と声を掛け、その夜に師匠がしこ名を決断。6月30日に行われた十両昇進パーティーに美輪は参加することができなかったが、貴ノ岩は自らがさらに出世することで名付け親への恩返しを果たすつもりでいる。

 モンゴル出身の22歳。師匠と女将・花田景子さんを「本当のお父さんとお母さんのような存在」と慕う。8歳で母を心臓病で亡くし、鳥取に相撲留学した3カ月後に父が肝臓がんで急逝。高校卒業後に入門した貴ノ岩にとって貴乃花部屋はまさに家なのである。「目標は師匠です。師匠からは“岩”のようなどっしりとした力士になれと言われています。攻め中心の落ち着いた相撲を取っていきたい」。たかが1勝、されど1勝。偉大な“父”に一歩でも近づくため、孝行息子は大きな礎を築いた。

 ▼貴乃花親方(元横綱、本紙評論家)貴ノ岩はうまく相撲を取って初勝利を挙げてくれました。師匠としてまずはホッとしました。しかし、まだ場所は始まったばかり。この勝利に甘えるのではなく、しっかりと最後まで気を抜かずに自分の相撲を取り切ってもらいたい。

 ◆貴ノ岩 義司(たかのいわ・よしもり=本名アディヤ・バーサンドルジ)1990年2月26日、モンゴル・ウランバートル生まれの22歳。相撲留学で来日した鳥取城北高時代は国体個人4位、世界ジュニア中量級で準優勝。高校卒業と同時に貴乃花部屋に入門し、09年初場所で初土俵。得意は右四つ、寄り、投げ。1メートル81、138キロ。血液型O。

続きを表示

2012年7月10日のニュース