藤原新“賞金倍増ダッシュ”で2位!五輪も当確!

[ 2012年2月27日 06:00 ]

<東京マラソン2012>日本人トップの2位でゴールする藤原新

東京マラソン

(2月26日 東京都庁発~東京ビッグサイト着の42・195キロ)
 苦労人がついに五輪切符をつかんだ。男子はロンドン五輪選考会を兼ねて行われ、実業団に所属していない藤原新(30=東京陸協)が、日本歴代7位の2時間7分48秒で日本選手トップの2位に入り、初の五輪代表入りを確実にした。最強市民ランナーの川内優輝(24=埼玉県庁)を打ち負かす快走で賞金400万円も獲得。固定収入がなくスポンサー募集中という苦況のプロランナーが意地を見せた。マイケル・キピエゴ(28=ケニア)が2時間7分37秒で初優勝した。

 両手を広げ、藤原新が歓喜のゴールに飛び込んだ。し烈な2位争いを繰り広げたキプロティチをわずか2秒振り切り、国内唯一の賞金レースで400万円をゲット。3位の賞金は200万円だけに「最後の200メートルは200万円スパート」と笑った。得たものは賞金だけではない。日本歴代7位で日本選手トップとなり、ロンドン五輪代表の座も確実にした。副賞としてニューBMW328i(570万円相当)も手に入れた。

 圧巻の走りだった。25キロでペースメーカーが外れると一気に前へ出た。後続には「ついてこい!」と手招きする気概を示しながら、知人にはピースサインをする余裕も見せた。41・2キロではゲブレシラシエをかわして3位に浮上したが満足しない。「金に目がくらんで必死でしたね」とさらに加速。最後の2・195キロは出場選手中最速の6分41秒を出し、08、10年に続く3度目の2位に入った。左足親指にまめができ、両ふくらはぎはけいれんしたが関係なし。闘志が体を押していた。

 一昨年3月にJR東日本を退社してプロランナーに転向したが、ここから苦難の連続だった。右足裏など度重なるケガに悩まされ、スポンサー契約を結んだ健康食品関連の会社からは賃金未払いが続いて昨年11月に契約解除。現在は貯金を切り崩しながら練習する「プータローランナー」。収入がなく大好きな酒も断ち「かなりの覚悟で臨んだ」という選考会だった。

 家族ができたことも奮起の一因となった。昨年10月5日に富山県内の病院に勤務する年上の優子さんと結婚し、1歳の長女・葵衣(あおい)ちゃんもいる。だが、藤原新はレースに出場するため家族の元を離れて都内に拠点を置いている。感謝してもしきれない優子さんにはレース後に電話をしたが「平然としていた」と妻の強さにビックリ。賞金400万円については「妻の口座に納付します」と照れ笑いした。

 レースを練習に使う川内流を意識し、高い負荷をかける練習法を採用。1キロ2分58秒のハイペースで鍛えてきた。日本選手の2時間7分台は07年12月の福岡国際で佐藤敦之が出して以来。「本当は日本記録を狙っていたが合格のタイムかな」と胸を張った。

 「五輪のない競技人生は考えられなかった」という藤原新のモチベーションは「ロンドン、BMW、プライズマネー」。苦労人が陸上界に“新た”な風を吹かせた。

 ▼尾県貢・日本陸連専務理事 藤原新はタイムもさることながら、レース展開が素晴らしかった。非常にリラックスして後半にエネルギーを蓄えていた。30キロ以降にリズムが崩れなかったのも評価できる。

 ▼坂口泰・日本陸連男子マラソン部長 藤原新選手が男子マラソン界のムードを変える走りをしてくれた。右肩上がりで五輪に向けて勢いを持っている。実業団選手は従来の価値観だけでなく、新たなものを取り入れていく必要がある。

 ▽東京マラソンの賞金 09年に国内で初の賞金レースになった。男女とも優勝800万円、2位400万円、3位200万円、4位100万円、5位75万円、6位50万円、7位40万円、8位30万円、9位20万円、10位10万円。別にタイムボーナスとして世界記録を出せば3000万円、日本記録で500万円、コースレコードに300万円。世界一の賞金額を誇るドバイ・マラソンの賞金は優勝25万ドル(約2000万円)、世界記録樹立で100万ドル(約8100万円)のタイムボーナスがある。

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