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海自ヘリ2機墜落 1人死亡7人不明 夜間訓練中に空中衝突か

[ 2024年4月22日 05:30 ]

海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター(海上自衛隊提供)
Photo By 共同

 伊豆諸島の鳥島東方海域で20日深夜、訓練中の海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が墜落した。21日、東京・市谷の防衛省で記者会見した木原稔防衛相は「2機が衝突した可能性が高い」との見方を示した。2機には計8人が搭乗。海自はうち1人を救助したが死亡を確認、残る7人の捜索を続けた。自衛隊では昨年4月、沖縄県の宮古島付近で10人乗りの陸自ヘリが墜落し、全員が死亡する事故が起きている。

 墜落現場は鳥島から東に約270キロの海域。海自によると20日夜、ヘリ6機と艦艇8隻で海自潜水艦を探知する訓練を行っていた。午後10時38分ごろ、大村航空基地(長崎県)所属のヘリ1機の通信が途絶。1分後に緊急信号を受信した。同11時4分には小松島航空基地(徳島県)所属のヘリ1機と連絡が取れない状態であることが分かった。事故当時、もう1機ヘリが飛行していた。

 21日未明には木原防衛相が緊急会見。「2機は墜落したものと考えられる」と説明した。報道陣からの「他国の関わりや、何らかの攻撃を受けた可能性はあるか」の質問には「確認は取れていない」と返答した。同席した海自トップの酒井良海上幕僚長は「他国の関与はなかったと考えるのが適当」と答えた。訓練は海自のみで行っていた。

 海自は護衛艦や航空機を投入し、海上保安庁の巡視船と航空機も加わって現場を捜索。搭乗員1人を発見、救助したが、死亡が確認された。現場は水深約5500メートル。捜索現場で2機のフライトレコーダー(飛行記録装置)を発見し、回収した。ヘリの回転翼のブレード(羽根)や機体の一部、ヘルメットも数個見つけた。酒井海上幕僚長は会見で、2機が訓練中に近接していたことを示すデータがあることも明かした。近接したヘリは互いに目視で位置を確認。ただ夜間訓練では、機体に取り付けられたライトでしか判別できず、見えにくくなる。接近すると警報が出る仕組みはあったという。機器の異常は確認されていない。

 墜落したSH60K哨戒ヘリは、潜航する潜水艦の位置を特定するため海中にソナーを投下し、潜水艦が発する微弱な音波を探知。海上で戦闘があった場合、威力を発揮する。海自では、中国が海洋進出を加速させていることもあり、潜水艦に対処する訓練は最重要と位置付けられている。それだけに、事故は防衛省全体に大きな衝撃を与えた。

 搭乗員10人全員が犠牲になった宮古島付近での陸自ヘリ墜落から1年。海自ヘリによる夜間訓練中の事故は、2017年に青森県の竜飛崎沖、21年に鹿児島県の奄美大島東方沖でも発生している。この事故の後、海自は複数の航空機が展開する現場では高度差を指示するなど、再発防止策の徹底を打ち出していた。「教訓が風化せぬよう教育を実施しているが、痛恨の極みだ」。木原防衛相は沈痛な表情を浮かべた。海自は残る7人の捜索を続け、事故原因を調べる。

 ◇SH60哨戒ヘリコプター 米海軍のSH60ヘリをベースに、海上自衛隊独自の対潜システムを導入。先行のJ型や今回墜落したK型などがあり、K型は全長19.8メートル、全重量10.9トンで、4人乗り。低周波ソナーなどを積み、対潜爆弾や対艦ミサイルも搭載可能。ソナーはホバリング中の機体からつり下げて海中に投入する。夜間や悪天候でも安全に着艦できる装置も備えている。

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