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「太陽フレア」頻発 トラブル発生の不安…電気止まる、携帯使えない、飛行機飛ばない

[ 2024年5月12日 04:40 ]

 太陽表面の爆発現象「太陽フレア」が頻繁に発生し、日本各地で「デリンジャー現象」と呼ばれる通信障害が発生していると、国立研究開発法人・情報通信研究機構が警戒を呼びかけている。強力なエックス線を放出する太陽フレアは、強さに応じて5段階に分類され、8~11日にかけて最大クラス「X」を少なくとも7回観測。11日午前には、X5・8(10が最強)が発生したと臨時情報が出た。気象庁は同日、地球の磁場である地磁気の大きな乱れ「磁気嵐」を観測したと発表した。

 今回の規模での連続発生は18年8カ月ぶりという。10日夜には、電子マネー「モバイルSuica(スイカ)」が一部使用できなくなるトラブルが発生。JR東日本は原因をサイバー攻撃としたが、太陽フレアへの不安が募った。

 地球は自転していることで磁場に取り囲まれている。太陽からは常に有害な光線が地球に届いているが、この“バリア”のおかげで通常は影響を受けない。しかし今回のような最大クラスの太陽フレアとなれば話は別。太陽の表面にある高温の「コロナガス」も地球に向けて飛ばされており、地球の磁場を乱す。人工衛星や衛星利用測位システム(GPS)、短波通信に障害が起きる可能性があり、総務省が発表した「最悪のシナリオ」では通信・放送、携帯電話は2週間機能せず、GPSを使う航空・船舶の運航停止で食品、日用品の流通がストップ。変電所、送電網は太陽フレアに脆弱(ぜいじゃく)で、長期にわたり大規模停電の恐れもある。実際、1989年3月にカナダのケベック州で大停電が発生するなどの被害が起きた。GPSシステムの崩壊が軍事兵器に影響を及ぼす懸念があるとの指摘もある。ミサイルなどの誘導システムが狂えば、想定外の事態を招く可能性はある。

 太陽の活動サイクルは11年周期で、2024年は今周期の極大期に当たる。ピークは今年半ばから後半とも言われている。同機構宇宙環境研究室の津川卓也室長は「今は太陽の活発な領域が地球を向いている。地球から見て裏側に回るまで1週間程度かかるため、その間は警戒する必要がある」と話した。

 ≪世界各地でオーロラ観測≫10日までに世界各地で太陽フレアの影響とみられるオーロラが観測された。普段は確認されない英国南部や米国、中国などでも出現。11日夜には、北海道や石川県輪島市などでもオーロラのような現象が観測された。

 ▽太陽フレア 太陽の黒点付近で起きる爆発現象。強いエックス線や紫外線、電波のほか、太陽の上層部の大気「コロナガス」を放出。これらが地球に届くと深刻な影響が出る。規模によりA、B、C、M、Xの順でクラス分けされる。1段階上がるごとに規模は10倍になる。それぞれのカテゴリーに1~10がある。地球の磁場に作用し、通常は見られないような低緯度地域でもオーロラが観測できる。日本では北海道で見られることがある。

 ◇過去の太陽フレア◇
 ▽1989年3月 カナダ・ケベック州で約9時間の停電。600万人に影響
 ▽94年2月 リレハンメル冬季五輪でNHKの衛星中継が突如中断
 ▽2000年7月 観測衛星「あすか」が制御不能に
 ▽17年9月 大型ハリケーンに襲われたカリブ海沿岸地域で、無線通信が途絶える。救助活動に支障
 ▽22年2月 米スペースエックス社打ち上げの通信衛星49基中、最大40基が落下

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