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愛着薄かった名古屋が2年連続で観客動員数トップ!ファン獲得へ走り回った男の努力

[ 2021年12月22日 07:00 ]

名古屋マーケティング部部長を務める戸村氏(C)N.G.E.
Photo By 提供写真

 20年シーズンから2年連続で観客動員数はJ1でトップ。コロナ下で苦しい21年、21万人超えを記録したのは名古屋だけだった。マーケティング部部長兼任MDグループ長の戸村英嗣氏(43)は「これまで取り組んできた方向性は間違っていないと思っている」とうなずく。

 16年にマーケティング部を新設。10年にリーグ初優勝を果たし、その後数年間は安定した成績を残していたにもかかわらず、スタジアムが満員になることは少なかった。「意識調査をして分かったのですが、クラブとして認知されているけど愛着は他クラブよりも低かった」と戸村氏。危機感を抱き、抜本的な改革に乗り出すことになった。

 ファン層の年齢や性別、居住地のデータを集め、どんなニーズがあるのかを分析。従来は一つしかなかったファンクラブ会員の種類を特典に応じて4つに分類し、間口を広げた。ホームタウン活動では愛知県にある54市町村全てを回り、地域との結びつきを強化。スポンサー獲得も精力的に行った。結果、同部の立ち上げ前には1万人強だったファンクラブ会員数は19年に約3万人に達し、15年時は120社だったパートナー企業は220社にまで増えた。

 熱狂的なサポーターともコミュニケーションを密に取った。それまでは声を出さずに観戦することが多かったメインやバックスタンドの観客を巻き込む手拍子や全員がボードなどを持ってつくるコレオグラフィー(人文字)を導入した。サッカーに興味がない人や初めての観客がリピーターになってくれるよう、音楽や入場演出にも凝った。また、スタジアム外では「鯱(しゃち)の大祭典」、「ガールズフェスタ」や「男祭り」、子どもが楽しめるイベントも企画。戸村氏が「1年に4、5回は満足度調査を行って、次に生かしている」と話すように、それらは全て一方通行のサービスではなく「ファンやサポーターの気持ちや声をくみ取ることを意識した」ものから生まれた。

 「今季はルヴァン杯を獲得できた。次の目標はリーグ制覇。そこに向かうスタジアムの雰囲気をつくりたい。それがチームの後押しになると信じています」。10年以来2度目のリーグ優勝へ、戸村氏はさらに多くの人を巻き込んだ“後方支援”を見据えている。(飯間 健)

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2021年12月22日のニュース