×

C大阪・大久保 復活支えた壮絶肉体改造初公開!元競輪選手と踏み出した背水ペダル

[ 2021年3月9日 05:30 ]

ボディメンテナンスKG代表の後藤圭司さん(左)とC大阪の大久保
Photo By スポニチ

 完全復活の裏側には、過酷な日々があった。15年ぶりにC大阪へ復帰した元日本代表FW大久保嘉人(38)が、開幕から3戦4発とゴールを量産している。昨年はJ2で無得点だったストライカーは、今年の始動前に低酸素施設で自主トレを敢行。指導した元競輪選手の後藤圭司スポーツトレーナー(47)がスポニチ本紙の取材に応じ、その全貌を初めて明かした。

 背水の思いで取り組んだ肉体改造が、衝撃のミドルを生み出した。開幕第2戦の川崎F戦。大久保は古巣との対戦で、前半5分にゴールまで約20メートルの距離から右足を振り抜き、無回転の力強い一撃で先制点を生み出した。本人も驚いたスーパーゴールについて、後藤トレーナーは「ワットバイクで両足、背筋や腸腰筋なども鍛えたから決まったんだと思います」と説明した。

 「一年を通して動ける体づくり、その中で実戦にもつながる体づくりをしようと。嘉人(大久保)の熱意が凄かったので、こちらも本当に命懸けでした」

 これまでほとんど自主トレをやっていなかった大久保から、後藤トレーナーに電話があったのは、昨年末。数年前にある忘年会で同席した元競輪選手の後藤トレーナーは、バイクトレーニングの多くの利点を説明したことがあった。

 「めちゃめちゃ興味があります」と言いながら、自身に対する甘えもあったか、当時の大久保には敬遠されたという。だが、東京Vに所属した昨季はケガにも悩まされてJ2で無得点。「現役をやるのも、この1~2年が勝負なんです。“やり尽くした”という状態までやってみたいんです」。強い覚悟を打ち明けられ、個人トレーナーを快諾した。

 全てを託された後藤トレーナーは、トレーニング時間を午前9時30分から午後1時の3時間30分、日程は1月7日から20日までの2週間に設定。場所は、東京・豊洲にある世界最大級の都市型低酸素環境下トレーニング施設「アシックス スポーツコンプレックス 東京ベイ」に決めた。

 4勤1休のペースで、超がつく厳しいメニューを作成した。中でも嘔吐(おうと)を繰り返すほどハードだったのは、標高3000メートル相当の酸素濃度に設定された部屋でこぐワットバイク。富士山の8合目あたりと同等という低酸素下で20分走や6秒ダッシュを10本、30秒間の全力疾走などを続けた。

 初日を終えた時、大久保は床に倒れ込んで動けなくなったという。想像を超える苦しさだったが、全身に効果があるバイクトレだけでなく、敏しょう性や柔軟性を鍛えるさまざまなメニューをこなすことで、みるみるうちに体は締まっていった。体重は73.9キロから72.4キロに減り、体脂肪率は4.4%低下。一方で、両足の筋肉量は1.89キロ増加した。

 「めちゃくちゃ苦しかったと思うけど、本当によくやった。現役の競輪選手でも嫌がるメニューを、つらくても文句の一つも言わずにやり続けて…。“もう終わった”みたいに周りから言われていた中での活躍は、苦しみに耐えた努力に裏打ちされているんです」

 開幕弾が決まった瞬間、後藤トレーナーの目に涙があふれた。続く川崎F戦では2得点。翌日、電話で話す大久保の声は弾んでいた。

 「体、めちゃめちゃ動きます。反応もめっちゃ速いっす」

 天性の資質や経験、嗅覚だけではない。過酷なトレーニングを乗り越えたからこそ、38歳に再びピークが訪れた。

 ▽ワットバイク 英ワットバイク社が08年に発表したインドアバイク。従来の電気、磁石、摩擦などの抵抗負荷に代わり、空気抵抗から負荷をつくるシステムで実走に近いライド感覚を実現。12年ロンドン五輪で英国自転車チームの8つの金メダル獲得に貢献した。

 ◆後藤 圭司(ごとう・けいじ)1973年(昭48)12月19日生まれ、静岡県裾野市出身の47歳。プロ競輪選手として96年8月にデビューし、14年9月引退。現役時代から夜間学校に通い、柔道整復師の資格取得。現在は豊洲の「MIFA Football Park」内にある「ボディメンテナンス整骨院」の代表。人気ロックバンドMr.Childrenのボーカル桜井和寿の個人トレーナーも務める。

 【今季の大久保VTR】
 ☆開幕戦柏戦(2月27日ヤンマー)2トップの一角で開幕スタメン。前半42分にDF松田陸のクロスを頭で合わせて先制点をマークした。C大阪で15年ぶりの得点は、J1の同一チームで最長ブランク弾。

 ☆第2戦川崎F戦(3月3日等々力)古巣相手に前半5分、強烈な右足ミドル先制弾。同22分には松田陸のクロスを左足で合わせて2点目。J1史上最年長で開幕2戦連発。

 ☆第3戦FC東京戦(3月6日味スタ)前半14分にMF坂元のボールに頭から飛び込み、自身初の開幕3試合連続ゴール。開幕からに限らず、38歳8カ月25日での3戦連発は、04年の三浦知良を超えJ1史上日本人最年長。後半13分にはMF原川の得点をアシストした。

続きを表示

この記事のフォト

2021年3月9日のニュース