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仙台Jr.ユースのDF藤沢 津波から母子救出

[ 2011年3月25日 06:00 ]

 Jリーガーの卵が2人の命を救った。仙台は24日、下部組織所属のDF藤沢恭史朗(15=東松島市立矢本第二中3年)が3月11日の東日本大震災発生時に、宮城県東松島市で人命救助を行っていたことを明らかにした。津波に流されてきた母子2人を支えたまま水かさが減るまでの約3時間、濁流の中で耐え抜き、2人を避難所まで送ったという。今なお避難所で生活している藤沢だが、その勇気ある行動には称賛の声があがっている。

 壮絶な救出劇だった。仙台関係者によると、藤沢は地震発生直後、外出先から東松島市内の自宅に向かう途中、津波に襲われた。助かろうと必死にもがいていたところ、津波に流されている母子を発見。自身も極限状態の中、右腕で子供、左腕で母親をつかんだ。

 2人を抱えながら近くにあった軽トラックの屋根に登ったが、ほどなくして水かさが胸のあたりまで達した。濁流にのみ込まれる恐怖の中、母親を左腕で抱えたまま、とっさに子供を肩車した。その体勢で水かさが下がるまで耐え抜き、その後2人を近くの避難所に送り届けた。

 仙台関係者は「本人は“午後7時ごろまでトラックの上いた”と言っているとのことです」と証言。東松島市に津波が到達したのは午後3時半から午後4時の間と推測され、極寒の中で3時間以上も親子を支え続けたことになる。藤沢は2人の名前を確認する余裕もなく、家族を捜すために別の避難所へ。藤沢自身の安否が確認されたのは地震発生から4日後の15日だった。

 藤沢は仙台のジュニアユースに所属するセンターバックで、身長1メートル76、65キロ。スピードと正確なキックが持ち味で、来年度からのユース昇格が決まっている。現在も東松島市内の避難所での生活を強いられており、クラブとは連絡の取りづらい状況が続く。仙台関係者は「たまたま藤沢と連絡の取れたコーチが救出の話を聞きました。よく頑張ったと思います」と感動しきり。将来有望なJリーガーの卵が、決死の行動で尊い2人の命を救った。

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2011年3月25日のニュース