×

元問題児、今やフィオ復活の切り札

[ 2008年1月29日 06:00 ]

<フィオレンティーナ・エンポリ>相手DFと競り合うムトゥ(左)

 イタリア・セリエA第20節の8試合が27日に行われ、フィオレンティーナがエンポリを2―0で下した。ルーマニア代表FWアドリアン・ムトゥ(29)が後半41分に決勝点を挙げ、5試合連続得点で今季最多の4連勝に貢献。過去にコカイン使用で処分を受けたこともあるムトゥは、得点ランクでも2位に浮上し、9季ぶりの欧州CL出場を狙う古豪を支えている。

 好調な時はツキまで味方してくれる。引き分けムードが漂い始めた後半41分、DFのクリアボールが走り込んだムトゥの胸に当たってゴール内へ。欧州CL出場権を争う5位ウディネーゼとの勝ち点差を4に広げる価値ある決勝弾となった。

 昨年12月16日のサンプドリア戦から5戦連発7得点。その間チームは欧州CL出場圏の4位に浮上し、通算13得点のムトゥ自身も得点ランク2位に躍進。好成績を支える殊勲者は「難しい時期もあったが、ここで平穏な人生を見つけた。チームメートといつかタイトルを獲る」と訴えた。

 かつてはトラブルメーカーだった。母国ルーマニアではスピード違反を逃れようとパトカーとカーチェイス。代表戦前日でも夜遊びした。極め付きは04年10月。薬物検査でコカイン使用が発覚してチェルシーを解雇され、FIFAから出場停止7カ月の処分を受けた。

 選手生命の危機だったが「あの時期があったからこそ人間として成長できた」とムトゥは言う。リハビリ・プログラムを終え、救いの手を差し伸べてきたユベントスで復帰。厳格なカペッロ監督(現イングランド代表)の下で規則的な生活と実力を取り戻した。昨季加入のフィオレンティーナではいきなり16得点。イタリア代表FWトニがバイエルンMに移籍した今季は、従来よりも左サイドからゴール前に切れ込む動きを意識し、得点王を目標に破壊力が増した。

 Rマドリードなど、ビッグクラブが獲得を狙っているとも報じられるが「世界には金で買えない人間もいる」と移籍を拒否。「クラブ再建という会長の夢に共感している」と強調する。リーグ優勝2回の古豪も02年終了後に破産。デッラバッレ会長がクラブを立て直した後も、06年の不正関与など足踏みはあったが、このまま欧州CL出場権を勝ち取れば復活への足掛かりになる。どん底からはい上がったムトゥこそ、その先導役にふさわしい。

続きを表示

2008年1月29日のニュース