×

ディーン7位突破!3位と94センチ差メダル狙える

[ 2012年8月10日 06:00 ]

男子やり投げ予選の2投目で82メートル07をマークし、天を指差すディーン元気

ロンドン五輪陸上

 男子やり投げ予選が8日行われ、B組のディーン元気(20=早大)が82メートル07をマークし、11日の決勝に進出した。同種目の日本人の決勝進出は84年ロサンゼルス大会の吉田雅美(5位)以来、28年ぶり。予選3位の選手とはわずか94センチ差で、同種目初の表彰台も視界に捉えた。日本選手団主将で、A組の村上幸史(32=スズキ浜松AC)は、77メートル80で14位に終わり決勝に進めなかった。

 2投目、夢舞台でディーンが宙を舞った。右腕をしならせて800グラムのやりを放つと同時に、勢い余って地面へダイブ。助走がうまくいった時の証の“エアD”が出た。予選通過ラインの82メートルを超える82メートル07をマーク。人さし指を立てて力強くガッツポーズすると、「ワッハ!イエス!!」と叫んだ。日本人28年ぶりの予選通過。「無事に通過できた。ここは通過しないといけないところなんで」。初の五輪出場とは思えない、余裕の表情を浮かべた。

 高い修正能力を見せた。1投目は71メートル58と大失敗の投てき。原因は助走がピッチ走法ではなく、ストライド走法になってしまったこと。2投目は助走で軽快にピッチを刻んだ。「課題を確認して投げられた」。ディーンの試合が始まる前、A組では尊敬する先輩・村上が、まさかの予選敗退。競技場に入ってから悲報を聞かされた20歳は、静かに燃えていた。「力んでボクも決勝に行けなくなるのが一番ダメ」というクールな視点と、「村上さんの分まで」という熱いハートが、決勝への道を切り開いた。

 父・ジョンさんは英国ニューカッスル出身。自身のルーツと言える英国での夢舞台で、スタンドで観戦した父や家族への感謝の思いをやりに乗せた。「サポートしてもらっている親への恩返しに来たと思っている」。ジョンさんによると、ディーン家の先祖は海の支配者・バイキングという。ディーンも子供の頃、地元・神戸の海に潜り、モリでたこを串刺しにして遊んだ。モリをやりに持ち替えた20歳は、日本の競技場では考えられない8万人の大声援を浴びた。

 全体7位での決勝進出だが、予選3位ピトカマキ(フィンランド)の記録83メートル01とはわずか94センチ差。日本人同種目初となるメダル獲得も十分に射程圏だ。「予選は予選。決勝では外国勢は見違えるほど別人でくる。ボクも負けないようにやらないとな」。4月29日の織田記念で日本歴代2位の84メートル28をマークして、一気に注目される立場になった。わずか4カ月前までは国内でも無名だった若武者が、世界が驚くビッグスローに挑む。

続きを表示

2012年8月10日のニュース