【チャンピオンズC】アウォーディー150点!!動く「三春駒」

[ 2016年11月30日 05:30 ]

仰天馬体に達眼が150点をつけたアウォーディー
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 砂の超新星が現れた。鈴木康弘元調教師(72)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第17回チャンピオンズC(12月4日、中京)ではダート統一G1年間4勝を目指すコパノリッキーに100点満点。だが、ダート無傷6連勝中のアウォーディーには、満点を上回る異例の150点を付けた。達眼を仰天させた規格外れのスーパーボディーとは…。

 福島県の三春町には日本で最初の年賀切手に採用された馬の郷土玩具が連綿と受け継がれています。その名も「三春駒」。江戸時代、この地の野生馬を馴致(じゅんち)、改良して馬産を興し、三春藩の藩財政を立て直したことに由来する木製の民芸品です。鋭角な線と面を生かした均整の取れた骨格、黒い毛に金と朱の飾り馬具を描いた美しい彩色、刈り込まれた麻のタテガミと尾。青森の八幡駒、宮城の木ノ下駒と並ぶ日本三駒の一つに数えられています。

 アウォーディーの姿を見たとき、真っ先に思い出したのが「三春駒」です。多くのサラブレッドは前後肢のどちらかに負重をかけて立つものですが、この馬は大地を踏みしめる四肢の負重が均等。上質な馬玩具のような安定した立ち方です。もっと驚いたのがタテガミ。なんと刈り込まれています。髪質が硬くてブラッシングしても寝かせられないのか、髪の量があまりにも多いのか。ともあれ、三春駒のようにタテガミを刈ったサラブレッドなど極めて珍しい。

 体つきも規格違いです。この名玩のように全体が絶妙なバランスで調和している上、個別の部位が凄く発達している。上体を見ると、筋肉で岩のように隆起したトモ(後肢)、肩、胸前。下体に目を移すと、大きくて角度のいい飛節や膝が上体のすさまじいパワーをしっかり受け止めています。砂の新王者にふさわしい肢体。つなぎも立ちすぎず、寝過ぎずの絶妙な角度。腰から尻にかけた骨格のつくりが浅いのが玉にきずですが、その唯一の欠点も鋼のような臀部(でんぶ)が十全に補っています。

 三春駒のようにおとなしい馬なのでしょう。ハミの代わりに制御力の弱いモグシ(簡易頭絡)とチェーンシャンク(頭絡を補助する鎖)だけで撮影に臨みました。悪さをしたり、暴れたりしないとスタッフが確信しているのです。ハミだけでは心もとないため上部の歯茎を鎖(リップチェーン)で押さえつけた同厩舎のラニとは正反対の気性なのでしょう。鼻の穴をしっかり開き、目も耳も一点に集中しています。

 馬の伝統玩具は鞍を着けているため背中の形が描かれていませんが、こちらは背中がゆったりして遊びがある。福島・三春町まで走って帰れるとは言いませんが、距離に融通が利くのは間違いありません。100点満点では収まらない規格外の馬体と立ち姿。動く三春駒です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。

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