【安田記念】クラレント&アリオン兄弟 一族の悲願へ橋口師送り出す

[ 2015年6月3日 05:30 ]

左回りで重賞5勝のクラレント(左)。ゲートが安定し、2連勝と上昇気流に乗るレッドアリオン

 春の最強マイラーを決める「第65回安田記念」は混戦ムード。来年2月に定年を迎える橋口弘次郎師(69)はクラレント、レッドアリオンの兄弟2頭で最後の挑戦。実績の兄と勢いの弟が、一族悲願のG1タイトルを懸けて火花を散らす。

【安田記念】

 来年2月で70歳定年を迎える橋口弘師。最後のダービーはダノンメジャーで挑み11着に敗れたが「作戦通りの競馬だったから悔いはない。昨年勝っているから(ワンアンドオンリーで初V)、今年は気持ちに余裕があった。初めて楽しめたダービーだった」と、穏やかな表情で振り返った。執念を燃やしてきたダービーへの挑戦は終わったが、調教師人生のラストスパートは続く。今週は悲願のG1制覇を目指す兄弟2頭を府中へ送り込む。

 まずは弟のレッドアリオン。気性難もあって出世が遅れたが、5歳となった今年初戦の洛陽Sを快勝すると、続くマイラーズCで待望の重賞初V。デビュー以来初の連勝を飾り、上げ潮ムードでG1に挑む。「ゲートさえ決まれば、いいスピードを持っている馬。ここ2戦はゲートが安定して好位につけられたのが好走の要因。東京は実績がないが、昨年の富士S(3着)は凄い脚で追い込んできた。充実した今なら」と師は力を込める。

 一方の兄クラレントは既に重賞6勝。実績では文句なしに弟を上回る。昨秋以降の4戦は凡走しているが京都、阪神、中山といずれも右回り。重賞6勝のうち5勝が左回りのサウスポー。昨夏、新潟の関屋記念、京成杯AHを連勝したのは記憶に新しい。「やはり左回りの方がいい。まだ老け込む年齢(6歳)ではないし、体調に気になるところもない。うまく流れに乗れれば」と反撃に期待する。

 普段から堂々と振る舞う優等生の兄に対し、弟はやんちゃで落ち着きのないタイプ。良績も兄は左、弟は右回りに集中と正反対だ。「毛色も性格も違い、似たところが全くない。自分も周囲から指摘されて初めて兄弟と気付いたくらい」と師は笑う。

 母エリモピクシーの産駒は2頭の長兄にあたるリディル(引退)を含めた3頭が橋口弘厩舎に在籍。3頭とも重賞は勝っているが、G1タイトルには手が届いていない。兄弟の意地がぶつかり合う一戦は、一族の悲願が懸かる舞台でもある。「兄弟2頭でG1なんて、なかなかないこと。どちらも頑張ってほしい」。指揮官は温かい目で2頭の戦いぶりを見守る。

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2015年6月3日のニュース