【密着!池江厩舎】(6)池江師 調教師を目指した意外なきっかけ

[ 2013年5月22日 06:00 ]

調教師になる意外なきっかけを語った池江調教師

 こんにちは、桜井聖良です。池江厩舎の短期連載6回目で、池江師への独占インタビュー編最終回になります。父でもある池江泰郎元調教師の存在について、そして調教師になろうと思った意外なきっかけやスタッフへの思いなどを教えていただきました! 

 ――未勝利の馬が勝った時などの喜びをお話していただきましたが、先生がうれしいなと思う時はやっぱり馬のことが多いですか?

 「そうです、セリで選んだ馬が、1歳、2歳とこちらの期待通りに成長してくれている姿を見るとyれしいですし、ほとんど馬にかかわることですよね。四六時中考えていますし、考えているのも好きなんです。父(池江泰郎元調教師)もそんな人で前の日まで2日間一緒に牧場巡りをしました」

 ――先生にとってお父さんの存在はどのような存在でしょうか?

 「師匠ですね(即答)。95%師匠で、5%父親です(笑)」

 ――プライベートでも馬のお話をされていますか?

 「やっぱり馬の話が多いですよね。あの馬どこを使うんだー?とか」

 ――じゃあほとんど会話は馬のことばかりですね!

 「もう小さい時からそうでしたね。逆に僕が小学生の時は、競馬番組表を手に持って、父にあの馬どこに使うの?とか聞いていましたから(笑)」

 ――では調教師になると決めたのも自然な流れだったのでしょうか?どうして調教師になろう!と思われたのですか?

 「調教師になろうと思ったのは10歳の時ですね。あるテレビドラマを見ていて“調教師になりたい!”って即決意しました!」

 ――ドラマですか!?

 「はい、刑事ドラマですね。もともと騎手になりたいとは本当に物心つくぐらいから思っていました。幼稚園の寄せ書きにも“騎手になりたい”と書いていましたし。その気持ちが調教師になりたいと変わったのは10歳の時。中学1年生まで小さかったので騎手にはなれる条件ではあったのですが、もうあのドラマを見てからずっと調教師を目指していました」

 ――ドラマのストーリーが非常に気になります。

 「お父さんが警察官か警官だった少年の家に強盗が入り、警官の父親なのに犯人を銃で撃つことが出来ず、母親が死亡。なんで、お父さんは警官なのに撃てなかったんだ!とずっと少年の心にはもやもやしたものがあったのですが、その少年が刑事になってある事件に携わり、それを解決したとき、父親がなぜあの時撃てなかったのかその心情を理解することができ、2人のわだかまりがなくなるというストーリーで。僕の父は、その時すでに調教師だったので、すごい感動したんですよね」

 ――ドラマによって決意したとは意外でした!調教師になる前に抱いていた調教師でもある父への疑問を、実際自身が調教師になって理解できたことは多々ありましたか?

 「ありましたね。僕が助手時代によく父と衝突していたんですよ。僕は乗った感覚で父に意見を述べていました。馬がフレッシュじゃない。疲れが残っているからこれは使うべきじゃないと。でも父はこの範囲なら使っていかなくてはいけないとよく言っていましたね。そしていざ自分が調教師になって初めて理解出来たんです。簡単に競馬ってやめられないんだなって。行かなければいけない時、多少無理してでもGOサインを出さないといけない時があるんだなって実感しました。もちろん故障をさせるまではだめですよ。だけどある程度ケアして、できる範囲であれば競馬にもっていかなくてはいけない。やめるだけじゃだめなんだって、調教師になって初めてわかりました。“あ、おやじが言っていたことは正しかったんだな”って」

 ――そういった意見が厩舎スタッフからも出てきたりしますよね。

 「そうですね。でも、それを説得して競馬に向かわせるのが僕の仕事。調教師の仕事というのは馬だけでなく人も教育していかないといけませんから」

 ――今、池江厩舎と言えば日本の中でもトップと言ってもおかしくないような厩舎でもあるわけですが、ここからもう一段階成長していくには、何が課題となっていますか?

 「僕自身が成長しないといけないですね。調教技術をさらに高め、相馬眼をさらに養うこと。あとうちの厩舎はキャリア5年以内という子がたくさんいるので、その子たちが成長していけば、自然とうちの厩舎の底力も上がるでしょうしね。僕も負けないように成長していかないといけないなと思っています」

 ――先生にとって調教師としてのポリシーはなんですか?

 「馬優先という考えはずっと貫きたいです。そうすることによってファンの人だって喜んでくれるんじゃないかなって。オルフェを有馬記念に使わなかったのは、状態が完璧な状態ではなかったんです。本当は僕だって、オルフェの状態が良ければ有馬記念に使いたかった。だけど、こんな状態で使ってファンの人たちは喜んでくれるのかな?と。じっくり休んでの復帰戦となった大阪杯でオルフェが勝ち、みなさんが喜んでくれているのを見て、あー、あの時無理して使わなくてよかったなって思いましたね。馬がいつもの走りを見せられないほど、疲れているときにレースに使うのは、ファンの人たちを裏切ることになると思っています。ただ誤解されて残念だったのが、昨年のオルフェーヴルの宝塚記念出走前のコメントです。宝塚記念の時に本当に伝えたかったコメントは“天皇賞春後、最悪な状況になり、そこからどんどん馬がよくなっていって7割ぐらいまで戻ってきてます”だったのですが、それが“7割の出来”ととらえられてしまいました。それはちょっと残念でしたね。ですがファンのみなさんの中でも私たちが馬優先主義だということが、だいぶ浸透してきているようなので、それがうれしいなと思っています」

 ――ファンの方が多い厩舎でもあると思いますが、ファンの方へ何かコメントはありますか?

 「オルフェーヴルの大阪杯ですけど、僕はドバイから携帯を通して見ていました。まずファンファーレで拍手が起こり、オルフェが3コーナーでまくっていく時も拍手。そしてゴールした時も拍手が聞こえたんです。それがものすっごくうれしかったです!!オルフェが勝つ時を待っていてくれていたんだって。本当にファンのみなさんには感謝しています」

 ――先生の気持ちが伝わってきて私が涙出そうです(泣)。

 「いや、本当にファンみなさんには感謝していますよ。日本の競馬ファンは世界一ですからね。そういう人たちに見守っていただいてレースができるということはありがたいことです。日本はG2でさえあんなに応援してくれる。海外では絶対にあり得ないことです。秋はなかなかオルフェが勝ち切れなかったものの、大阪杯でやっと勝てたねと総待ちして温かい拍手を送ってくれる。あんなのはないですよ。本当にありがたいなぁって。だからこそ僕たちもやりがいがあるんですよね!」

 ――では最後に厩舎スタッフの方々に何か一言ありますか?

 「“ありがとう”ですね。もうそれに尽きます。私1人で出来ることには限界があり、スタッフがいないと強い馬が作れませんから。牧場スタッフも含めて厩舎のみんなにはありがとうという思いでいっぱいです」

 厩舎、牧場などのスタッフのみなさんに対する感謝の気持ちがとても伝わってきたインタビューでした。今まで池江先生とお話ししたことがなかった私は、“どんな方なんだろう?”と不安に思う気持ちがあったのも本音です。ですが1時間40分の取材を通して感じたことは、馬が好きで好きでたまらない少年のような人だということ。またとても柔軟な発想で、常に“可能性”を考えて言動をされているんだなと思いました。「先生は僕たちの意見にも耳を貸してくれるんだよ」。厩舎スタッフの方のこの言葉を思い出して、1人うなずいていた1時間40分でした。

 次回はトーセンソレイユについてお話ししたいと思います。お楽しみに!

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 ▼桜井 聖良(さくらい・せいら)タレント。競馬予想で来ない人気馬・来る穴馬を選ぶのが得意で、生放送番組でWIN5と予想したメーンレースを全的中させた経験を持つ。2011年から1年半、馬の勉強をする為オーストラリアに留学し、馬のマッサージが特技となった。尊敬する人物は大川慶次郎さんで、憧れる人物は鈴木淑子さん、原良馬さん。

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