【南部杯】トランセンド大逆転V!いざファルコン討ちへ

[ 2011年10月11日 06:00 ]

<南部杯>直線の追い比べを制したトランセンド(右)

 これが世界の底力。「第24回南部杯」が10日、今年は東京競馬場に舞台を移して行われた。1番人気トランセンドが直線でしぶとく差し返してV。ドバイワールドC2着の力を見せつけ、G1・3勝目をマークした。安田隆行師(58)はスプリンターズS(カレンチャン)に続く2週連続でのG1制覇。次走はJBCクラシック(11月3日、大井)が有力で、重賞6連勝中のスマートファルコンとのダート頂上決戦がいよいよ実現する。

 「本当にしびれたよ」。検量室前で愛馬を出迎えた安田師は汗びっしょりだ。競馬史に残る、驚異の差し返し。トランセンドが見せた大逆転劇は王者の勝負根性を一層際立たせた。

 ゲートは互角に出たが二の脚がない。押してようやく2番手だ。「体はできているが気合乗りが足りない」。藤田の心配が的中した。その後も鞍上の手は動きっぱなし。直線を向いて右ムチが入っても反応一息。残り250メートルではダノンカモンにかわされ3番手に転落した。

 そこからだ。必死に首を伸ばす。四肢を繰り出す。その迫力に圧倒されエスポワールシチーが失速した。1完歩ずつ脚を伸ばす。ゴール前、ついにダノンカモンを捉えた。「道中はハミを取らず遊んでいたから必ず余力はあると信じて追った。ホッとしたし内容的にも凄い競馬。馬はバテていないが人間はバテたね。実に勝負強かった」。藤田は安どの表情を浮かべた。

 「見ていて本当にしんどかった。3着かと思った」。安田師は体から力が抜けた様子だ。「世界の超一流馬相手に戦った馬。負けられなかった。見た目は苦しくても、あの態勢から伸びてくる。人気になり過ぎて恐さもあったが、さすがだった」。ドバイWC2着後、陣営は「秋は2番手でレースをする」と決めた。「もう挑戦者じゃない。ハナばかりでは勝たせてもらえない」と藤田。世界の頂点を目指すためには戦術の幅を広げることが重要。勝利だけでなく、勝ち方まで問われた一戦を底力で乗り越えた。

 今秋の大目標はJCダート(12月4日、阪神)だが、その前にJBCクラシックに出走するプランもある。スマートファルコンとの決戦は近い。「2番手で競馬ができたのは今後の戦い方に大きなプラス」と安田師。逃げるファルコンを番手でマークするトランセンド。そんな展開を想像するだけでワクワクする。来春には再度のドバイ遠征も待っている。

 休み明け、最も苦しい戦いを乗り越えたトランセンド。驚異の底力を見せつけた王者がダートG1戦線に君臨し続ける。

 ◆トランセンド 父ワイルドラッシュ 母シネマスコープ(母の父トニービン)牡5歳 栗東・安田厩舎所属 馬主・前田幸治氏 生産者・北海道新冠町ノースヒルズマネジメント 戦績17戦9勝(うち地方1戦0勝、海外1戦0勝) 総獲得賞金6億1865万8900円(うち地方1400万円、海外1億6262万4900円)。

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