さいとう・たかをさん お別れの会 「こち亀」秋本治氏「負けず嫌い」を懐かしむ

[ 2022年9月30日 05:30 ]

さいとう・たかをさん お別れの会

祭壇を見上げ、弔辞を述べる秋本治さん(撮影・木村 揚輔)
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 「ゴルゴ13」の作者で昨年9月に84歳で死去した劇画家さいとう・たかをさんのお別れの会が29日、都内のホテルで行われた。漫画家仲間のちばてつや氏(83)、里中満智子氏(74)、秋本治氏(69)が弔辞を読み、漫画家や出版関係者、ファンら約740人が別れを惜しんだ。会場にはライフルを持った実物大ゴルゴ像や著作の数々が並び、参列者は功績をしのんだ。

 祭壇は、さいとうさんが好きだった野の花をイメージ。白と青の花約5500本で飾られ、都会が舞台の物語を数多く描いた作家人生と対照的に自然への憧れを持ち続けた、生前の思いが反映された。両脇には「ゴルゴ13」「鬼平犯科帳」などのイラストが飾られた。

 遺影でほほ笑むさいとうさんに、人気ギャグ漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の秋本氏は「今日はファン代表として(弔辞を)読み上げることにします」と語り掛けた。少年時代に「ゴルゴ13」などの劇画に“洗礼”を受けた世代。「大人が読める漫画を出版社も漫画家も築き上げた時代だったと思う」と振り返った。

 「こち亀」がヒットし、憧れのさいとうさんと親交も深めたが、長期連載となり単行本の巻数がゴルゴを抜いて気まずい思いをしたことも。さいとうさんは「気にしてない」と話したというが、かつて月に650ページを描き「漫画界No・1」と言われた故石ノ森章太郎氏にライバル心むき出しだったとの逸話もあった。そのため、秋本氏には「先生は数字には厳しい。凄い負けず嫌い」との印象があり、漫画家仲間でゴルフを楽しむ時にも「巻数の話はせず、天気などで話をそらした」となつかしんだ。

 「こち亀」は2016年にギネス世界記録(当時)の200巻で週刊連載を終了。20年にゴルゴが並んで記念対談が行われた際「200巻は通過点だよ」と、80歳を過ぎてなお記録を伸ばす気満々の大先輩の姿を思い出し笑いを浮かべて語った。

 「ゴルゴ13」は昨年7月に201巻でギネス記録を更新。連載はさいとう・プロダクションによって現在も続いており今月206巻が刊行。「300巻に向けて頑張ってほしい」と期待した。

 ちば氏は「たかをちゃん」と遺影に向き合った。戦後漫画の激動期をともに生き抜いたことから「戦友」と呼び合った仲。「あんなに元気だったのに、まさか私が見送ることになるとは」と衝撃は消えない。「ちょっとこわもてだったが誰より周りを思いやる、とても優しくて思慮深いジェントルマンでした」と人柄をしのんだ。

 1960年代に生まれた青年漫画誌が根付いたことに「疑う余地なくあなたの功績大。このような作家を失った漫画界の喪失は計り知れない」と惜しみつつ「さいとうプロがしっかり引き継いでくれているので、ご安心ください」と天国へ語り掛けた。

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