鹿野晃院長 基礎疾患ない10代がコロナで死亡、救急搬送に時間要し「コロナ前の通常医療態勢であれば…」

[ 2022年2月17日 10:27 ]

フジテレビ社屋
Photo By スポニチ

 埼玉県三芳町の「ふじみの救急病院」の鹿野晃院長が17日、フジテレビの情報番組「めざまし8(エイト)」(月~金曜前8・00)に電話出演。さいたま市が16日に、埼玉県内で新型コロナウイルス感染の死者として同日公表された5人のうち1人は、同市在住で基礎疾患のない10代後半の男子学生と明らかにしたことに言及した。

 市によると、2日に39度を超す発熱があり、3日に市内の医療機関で陽性と診断された。6日に学生側から搬送要請があったが、救急隊の判断で搬送しなかった。翌7日に容体が急変し、救急隊が自宅に駆け付けたものの、受け入れ先が見つかって出発するまで約1時間半かかり、9日に死亡した。市は死因を、新型コロナ感染に伴い、血管内で血栓が多発する播種性血管内凝固症候群とみており、合併症が起きていた可能性もある。男性に基礎疾患はなく、昨年10月にワクチンの2回目を接種済みだった。

 永島優美アナウンサーから「埼玉県内の医療態勢というものは今、相当にひっ迫しているということでしょうか?」と聞かれた鹿野氏は「厳しいですね。病床使用率を数字で見ると、まだ余裕があるように思われるかも知れないんですけれども、もう現場は本当に疲労困ぱい状態で燃え尽き症候群のような状況で、高齢の方、介護が必要な方にものすごく人手がかかるんですね。重労働の中で、例えば普通に救急車を受けたいけれど、その救急車が来ますということを現場の看護師さんに伝えるだけでも悲痛な反応が返ってくるような状況」と説明。

 そして「今回のケースも近隣の救命センターを含めて受け入れが困難で、長距離を、時間をかけて運ばれて、というケースですね。コロナ前の通常の医療態勢であれば、この前日にも救急要請されているので、おそらくこの状況で受け入れして検査をしっかりして治療を開始していれば助かっていた可能性が十分にあると」と自身の見方を述べた。

 その上で「オミクロンがただの風邪という意見もあるんですけれども、たしかに若者にとっては多くの場合は今回のケースはまれで、普通の風邪のような症状で収まる。ただ社会全体で見ると、圧倒的多数で高齢の方がどんどん状態が悪くなって亡くなって、そうした方が医療のひっ迫、崩壊を起こしていくんですね」とし、「若者も交通事故とか、今回のようなまれなケースも含めて、もともとの医療の提供を受けることができない。社会全体で考えないといけない悪影響がもう出ているということで、ただの風邪とはまだ呼べない」と指摘。

 「ある意味、ウィズ・コロナで重症者だけみていけばいいということで感染者がすごく増えている。次の変異株、これがまた怖い変異株の可能性もありますし、後遺症もある。最近出た論文だと、1年たっても心筋梗塞とか脳梗塞とか血管系に感染しますので、こういった所の血管が詰まってしまう後遺症が残る。これが10年後にも残るのか、20年後にも残るのか、まだまだ未知のウイルスなので、これをずっと手放しでウィズ・コロナを目指していいのか」と疑問を投げかけ、「われわれ医療従事者も人間ですので、本来もっとやりたかった医療を無理やり動員して、例えば外科の先生を、手術もできないような状態でコロナの治療に動員して、学生や新人さんも希望を持って入ってきたのに、われわれも見えない状態で動員するっていうのは、これも結構かわいそうな状態で、なんとか改善するような政策を国には求めますね」と自身の思いを話した。

続きを表示

2022年2月17日のニュース