永瀬王座、気迫の「顔面受け」…熱戦の分かれ目 渡辺王将が解説

[ 2020年10月27日 05:30 ]

第70期王将戦 挑戦者決定リーグ

A図・藤井vs永瀬
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 高校生3冠の夢が散った。将棋の第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負で渡辺明王将(36)の対戦相手を決める挑戦者決定リーグは26日、東京都渋谷区の将棋会館で2局を行い、永瀬拓矢王座(28)が藤井聡太2冠(18)を164手で下した。永瀬は開幕3連勝、対照的に藤井は開幕3連敗で挑戦権争いからの脱落が決定。最年少3冠挑戦は来年度以降へ持ち越しとなった。

 藤井―永瀬戦を渡辺明王将(36)=名人、棋王の3冠=が解説した。攻守が何度も入れ替わった熱戦の分かれ目を「顔面受け」の97手目[先]5三歩とした。(構成・筒崎 嘉一)

 振り飛車党時代の永瀬将棋を見るようでした。7年ほど前、居飛車党へ転向して王座などタイトル3期を獲得しましたが、それまでは振り飛車党でした。挑戦権獲得へ、しかも6月の棋聖戦と王位戦では、勝てば挑戦権獲得という大一番で藤井2冠に連敗した。借りを返したい気持ちを感じた四間飛車の戦型選択でした。

 114手目△7三王(A図)が王自ら藤井2冠の攻め駒を攻めに行った「顔面受け」です。相手の攻撃を見極め、王を直接守備駒として使う、危険度の高い受け。▲2二竜と迫られても△4二香とフタをして念には念を入れました。大事な金を取られてはたまりませんから▲5一金と逃げましたが敵陣の1段目では威力半減です。永瀬王座が120手目△7五歩から反撃に出て、藤井2冠の頑強な粘りに一時形勢は混とんとしかけましたが押し切りました。

 相居飛車は若干、後手が不利ですから工夫が必要です。だから変化球を投げて勝機を見いだそうとした。四間飛車には藤井2冠も驚いたでしょうが、2人は研究仲間です。永瀬王座が研究会で振り飛車を指したかどうかは分かりませんが、最終第5局まで突入し、14日に永瀬王座の3勝2敗で決着した王座戦の経験も生かしての勝利と感じました。

 挑戦者で迎えたのは、振り飛車党の第一人者・久保利明九段。そこで対戦相手として肌身で知った最前線の振り飛車を、昔を思い出しながらぶつけたのではないでしょうか。

 藤井2冠の開幕3連敗は驚きです。リーグの7人全員が現役、もしくは元のタイトルホルダー。藤井2冠といえど負けて不思議ではない相手ぞろいですが、あっという間に2冠まで駆け上がった勢いを考えれば、ここでも本命だったためです。

 《3年ぶり四間飛車採用》開幕3連勝を飾った永瀬は約3年ぶりの四間飛車採用に「指してみたい作戦でしたが終始難しくてよく分からなかったです」と戸惑いながら振り返った。苦手としていた藤井を惑わすことには成功したが、中盤以降は難解な場面が続き、千日手が頭をよぎったこともあるという。苦戦の末の勝利でリーグは豊島とトップ並走。「(挑戦者争いに)一歩前進したとは思いますが、どこまでいっても大変。引き続き頑張りたい」と話した。

 ▼四間飛車 先手なら2筋でスタートした飛車を対局開始後6筋へ動かして指す将棋の戦法。振り飛車の代表的戦法で、故大山康晴15世名人が愛用した。 

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