コロナ禍の中、2人の快挙にひさびさ列島も沸いた!

[ 2020年9月17日 08:00 ]

ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢清監督
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】どんよりした空気を吹き飛ばすビッグニュースがスポーツ界と映画界から飛び込んできた。

 まずはテニスの全米オープン女子シングルスで頂点に立った大坂なおみ(22)だ。米時間12日にニューヨークで行われた決勝で、世界ランキング元1位のビクトリア・アザレンカ(31=ベラルーシ)に1―6、6―3、6―3で勝利し、2年ぶりの優勝。4大大会3勝目をあげた。

 全米で深刻度を増す人種差別に抗議の意思を示すため、決勝までの試合数に合わせて被害者の名前入りマスクを7枚用意。それが1枚たりとも無駄にならなかったのは、大坂の気持ちが勝利の女神のハートをも動かしたからかもしれない。

 イタリアからも吉報が届いた。第77回ベネチア国際映画祭でコンペティション部門に出品された「スパイの妻」の黒沢清監督(65)が監督賞(銀獅子賞)を獲得。日本人の同賞は2003年「座頭市」の北野武監督(73)以来17年ぶりとなった。

 作品は1940年代の神戸を舞台に軍の国家機密を知り、世に知らしめようとした貿易商と思いを添い遂げようとした妻の物語。蒼井優(35)、高橋一生(39)、笹野高史(72)、東出昌大(32)、坂東龍汰(23)、恒松祐里(21)らが出演している。

 コロナの影響で現地入りを断念した黒沢監督は都内で行ったオンライン会見で「賞まで頂けるなら行きたかった」と喜びの中に無念さもにじませながら、「作品の評価は審査員の反応もあるし、時の運。それが最後まで味方をしてくれた」と感想を口にした。

 カンヌの「ある視点」部門やローマ映画祭では既に受賞経験もあり、海外では黒澤明監督に絡めて「もう1人のクロサワ」とも賞される実力者。コメディー、ホラーなど幅広い作風で知られるが、観客をじわじわとスクリーンの中に引きずり込む構成力と役者から力を引き出す演出力は秀逸。北野監督に続く17年ぶりの監督賞に「信じてきた道は間違いではなかった」としみじみ語り、「巨匠は世界に山ほどいるが、そういう人たちに一歩でも近づければと思っています」と意欲をみなぎらせた。

 1932年に始まり、主要な映画祭では世界最古の歴史を誇るベネチア映画祭は日本映画とも浅からぬ縁がある。51年に黒澤監督の「羅生門」、58年に稲垣浩監督の「無法松の一生」、03年に北野武監督の「HANA―BI」が最高賞の金獅子賞を受賞。

 52年には溝口健二監督が「西鶴一代女」で監督賞に輝き、三船敏郎は61年に「用心棒」、65年に「赤ひげ」で2度男優賞を贈られている。89年には熊井啓監督の「千利休 本覚坊遺文」が銀獅子賞、11年に「ヒミズ」の染谷将太と二階堂ふみが新人俳優賞の栄誉に浴している。

 受賞作に主演した蒼井や高橋も大いに世界に顔を売った。“スパイの妻”に扮した蒼井は「たくさんの映画仲間から連絡が入り、みんなとても興奮し、喜んでいます」とコメント。夫の貿易商を演じた高橋も「作品が世界で評価されることをうれしく思います。黒沢監督のもと、あの空間、あのスタッフと共に作品を作り上げていく時間は、最高の体験でした」と喜びをつづった。

 国内の映画賞レースにも少なからず影響を与えそうだ。

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2020年9月17日のニュース