加藤さんの歌を絶やさないよう、みなさん長生きして

[ 2009年10月20日 06:00 ]

棺を車に乗せ、沈痛な面持ちの(左から)つのだ☆ひろ、坂崎幸之助、北山修、ムッシュかまやつ(1人空けて)四方義朗氏ら近親者たち。遺影を持つ女性の右隣で深々と合掌するのは高橋幸宏

 17日に長野県軽井沢町のホテルで首をつり死亡しているのが見つかった音楽家の加藤和彦=かとう・かずひこ=さん(享年62)の密葬が19日、都内の斎場で営まれた。「葬式はいらない」との遺志を尊重し僧侶による読経はなかったが、棺のそばに「遺書」が飾られた。「ザ・フォーク・クルセダーズ(フォークル)」で活動をともにした精神科医の北山修=アーティスト名・きたやまおさむ=(63)が別れのあいさつをした。

 盟友の死にただただ涙に暮れていた北山。参列者によると、出棺前に「加藤さんの中には2人の人間がいた。1人はいつも優しくてニコニコしている人。もう1人は厳しくて完ぺき主義で怖い人。この2人のうち厳しい人が自らの命を絶たせてしまったんだと思う」と話した。さらに「こんな死に方…。いつも仲間の言うことを聞いてくれたのに最後は聞いてくれなかった」と悔やんだ。
 北山は65年のフォークル結成当時からのオリジナルメンバー。盟友として精神科医として、自殺を食い止められなかった無念さがにじんだ。参列者からはすすり泣く声が漏れたが、北山は「加藤さんの歌を絶やさないよう、みなさん長生きしてください」と懸命に呼びかけた。
 加藤さんが生前、友人に送った手紙には「葬式はいらない」との一文があったが、北山やスタッフらが「最後の別れを」と望んで営んだ。せめて故人の遺志をくもうと、祭壇はなく読経もなし。会場に音楽も流されなかった。参列者は棺のそばに白いカーネーションを献花した。
 棺の近くには、自殺したホテルで見つかった遺書がパネルに張られて置かれた。参列した男性(72)によると、「これまでに作ってきた音楽というものが本当に必要だったのか」「生きていたくない」などと直筆で書かれていた。音楽制作で行き詰まったことが自殺の原因の一つとされており、関係者は「この遺書はすべての人に対するメッセージ。親しい人には伝えるべきだろうと思って展示させていただいた」と説明した。
 棺には愛用の眼鏡とお気に入りだったグレーのスーツが納められた。遺書の傍らには「最近、プロのカメラマンに撮ってもらった」(関係者)という遺影。出棺時には約5年間、事実上の夫婦関係にあった女性(34)がしっかりと抱えていた。密葬は約50分に及び、その後、都内でだびに付された。

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2009年10月20日のニュース