鳥越裕介氏 ソフトB・川瀬に今宮を脅かす安定感 高みを目指して、どんどん、練習というより稽古を

[ 2023年6月13日 08:19 ]

ソフトバンク・川瀬(撮影・岡田 丈靖)
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 【コラム 鳥越裕介のかぼす論】 ソフトバンクの川瀬晃選手は私と同じ、大分県出身。入団した当時から守りでは基本的な要素は備わっていて、守備要員では使えると思っていた。ただ、足が速くなかったので惜しいなという印象だった。

 久しぶりに見ると足が速くなっている。理由を聞いてみると「分かります?」とうれしそうだった。トレーニングコーチと走り方から見直したという。打撃は飛ばないが、芯の近辺に当てられる。複数ポジションを埋められるし、アタマからもいける。5月21日の西武戦では2―1の5回2死満塁でセーフティーバントを決めた。あれは度胸がないとできない。こういう選手は面白いと思っていたが、8年目でここまでこられたのならば十分だ。

 4日の広島戦は一塁で交錯し、左膝を負傷して出場選手登録を抹消されたが、一生懸命やった結果だった。逆に良くないのは一塁ベースのところで抜いて走る選手がまだ7、8割いること。ベース付近でケガするケースは本当に多い。だからしっかり走ることは徹底してほしいと常々、思っている。

 あの試合、1点差の8回1死一塁から三森がアウトになったけど、なんとかつなごうという形でバントした。そういうチャレンジは褒めてほしい。そうすることによってチームが、良い方に回る。失敗したらダメだから、やめておこうと考えるのはよくない。トライしたことを褒める環境があれば、選手は思い切ってできる。今のホークスにはそういうのがあるのかなと感じる。だから川瀬もチャレンジできたのだろう。

 川瀬を見ていると、立場的に現役時代の自分に似ているなと思う。あの頃はベンチでもできることはある。勝つためにはどうすべきかを考えていた。今でこそ、守備から戻る際にベンチを出て選手を迎えるシーンは当たり前だが、あれは99年に中日からダイエーにトレードで来てやり始めたことだ。ドラゴンズでは当たり前だった。同学年の大越に声をかけて「出よう」と。それに小久保が気づいてね。「いいね。それ」となった。

 中日時代は若手だったんで星野監督の前に座っていた。ミスが出ると背後から怒声が飛ぶ。そうするとチームの雰囲気は悪くなる。危ないと思った瞬間、声を出してかぶせていた。監督はこちらの意図も全部、分かっていたと思う。ちなみに殴られても向かってきたのは仁村徹さんと私だけだったそうだ(笑い)。

 レギュラーは10回に7回失敗できるけど、後からいく人は100%を求められる。常に一発勝負。守備のミスは終盤では一度で信用を失う。テクニックは上がるので、やめるまで高みを目指して、どんどん、練習というより稽古をしてほしい。今だったら、(今宮)健太に勝てるんじゃないか。そのぐらいの安定感は出てきたように感じる。

 本題とはそれるけど、最後に一つ。同学年の井出竜也コーチに初孫が誕生しました。おめでとう。(野球解説者)

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