科学的アプローチ“革命家”DeNA・バウアー「僕は科学の力でメジャーリーガーになれた」

[ 2023年5月4日 05:30 ]

セリーグ   DeNA4-1広島 ( 2023年5月3日    横浜 )

<D・広>ウイニングボールを手に笑顔のバウアー(撮影・島崎忠彦)
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 現在のMLBは科学的なデータに基づいたトレーニングが全盛だ。そのパイオニアといえるのがDeNAのトレバー・バウアー。インディアンス時代の19年5月に単独インタビューを行った奥田秀樹通信員が、当時の言葉からバウアーの野球理論に迫る。

 重さが違う色違いのボール(プライオボール)を壁に当てるウオームアップは、エンゼルス・大谷のルーティンとしても有名。この練習方法をシアトルの最先端トレーニング施設「ドライブライン」との共同で開発したのがバウアーである。

 「MLBに入った時、重さの違うボールで練習しようとしたら、“ケガをするからダメ”と複数の人に言われた。でも、今ではたくさんの選手が使い、投手のケガが減った理由になっているのかもしれない」と話す。驚くべきは初めて取り入れたのは8歳の時で、ボールを水に浸して重くしていたという。

 高校時代から物理が好きで「マグヌス効果(回転しながら進む物体に、進行方向に対して垂直の力が働く現象)」に興味を持った。エンジニアの父には「偉い人の言うことを無条件に信じてはいけない」と教えられた。何にでも疑問を持ち、自分で答えを導き出す。だから、時には周囲の声にも耳を傾けない。11年ドラフト全体3番目指名の期待の星としてダイヤモンドバックスに入団したが、捕手のリードを批判し、コーチの言うことも聞かなかったために1年半でトレードに出された。「野球界が40、50年前のやり方を続けているのはおかしい」と強い口調で話していた。

 試合前にはショルダーチューブと呼ばれる器具を使用する。使う位置、曲げる方向によって異なる筋肉群をほぐし、血流を促す。右手薬指の指輪について聞くと「これはフィットネストラッカー。心拍変動、消費カロリー、睡眠時間などを測っている。毎日50以上のチェック項目がある」。今では日本でも普及しているボールの回転数や変化量を計測する「ラプソード」は10年以上前に個人で購入し、取り入れていた。

 高速度カメラを使い、理想の球種に近づける「ピッチデザイン」もバウアーが先駆者。例えば、チェンジアップを横滑りで落とすには、どこに指をかけ、どうリリースすればいいのか。「僕は運動能力には恵まれていなかったが、科学の力でメジャーリーガーになれた。自分が発見したことは他の人とも共有したい」。その理論はYouTubeなどで惜しみなく公開する。

 科学的アプローチでMLBに革命を起こしたバウアー。日本球界にも成績以上に大きなものをもたらすのではないか。(奥田秀樹通信員)

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