辻発彦氏 過渡期の巨人には「我慢」が必要 原監督は常勝の概念にとらわれず数年先見た選手起用を

[ 2023年4月18日 05:30 ]

現在最下位の巨人。原監督(中央)はチームを浮上させられるか
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 どうした盟主――。巨人は16日の中日戦に敗れ、日本ハムと並んで両リーグ最速10敗。球団史上唯一の最下位だった75年以来48年ぶりの屈辱で、15試合目での10敗は18年と並び2リーグ制以降球団ワーストタイとなった。スポニチ本紙評論家の辻発彦氏(64)がチーム状態を分析。苦しい現状打破へ、さまざまな角度から提言した。

 リーグワーストの53失点の一方、13本塁打、46得点はリーグトップ。ただ、打線は中田翔ら一部が好調なだけで、全体的にいいわけではない。勝ちきれないのは、相手が嫌がる野球になっていないからだろう。

 野球はプレッシャーのかけ合い。巨人は15試合で両リーグ最少の1盗塁で、失敗も1つしかない。走ってこないとなれば、投手もクイックをしなくてもいい。プレッシャーがあってこそミスが生まれる。相手にとってこれは楽だ。現役時代、日本シリーズで戦った時も、守っていてプレッシャーを感じなかった。今季もそういう選手がいないし、戦い方のバリエーションが少なすぎる。急に走れといってもうまくはいかないが、プレッシャーのかけ方は他にもある。

 「巨人は勝たなければいけない」という昔からの宿命がある。原監督は手を替え、策を替え、とやっている。ただ「勝たなければ」の概念が強すぎるチームだと感じている。今まさに過渡期。坂本、丸らが年齢を重ねてきている中で、変わっていかないといけないチームでもある。

 17年から指揮を執った西武は、中村、栗山がベテランの域に入り、数年先を見て変わらなければいけなかった。そこで守備が良かった源田、飛ばすだけではなく器用だった山川、外崎ら、将来中心になるだろう選手を我慢して起用した。そういう我慢が「この先10年、大丈夫」となることもある。

 巨人は歴史のあるチームで、これからの歴史もつくらないといけない。何年か後に強い、いいチームにするには準備期間と、ある程度の我慢が必要。目の前の勝利だけに固執しすぎてはいけない。パ・リーグの日本ハムはミスで負けることも多く最下位だが、若い選手の将来が面白く楽しみだ。順位以上に、他のチームが「今後は嫌だな」と感じているはずだ。

 ただ、まだ15試合。どっしり構えてやった方がいいだろう。坂本だって中途半端にせず、とことん使い続けるべき。それでダメならショートから去ればいい。力があるチームなのは、間違いないのだから。

 ≪攻撃面の成績良好も守備面に課題≫今季のチーム成績を見ると攻撃面の数字は悪くない。46得点はDeNAと並びリーグトップで、115安打、13本塁打はいずれも単独トップ。一方で守備面では53失点、118被安打、防御率3・28、8失策といずれもリーグワーストの数字が並ぶ。もっとも攻撃でもリーグ4位の得点圏打率・212、リーグ最少の1盗塁など、改善すべき点は残されている。

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2023年4月18日のニュース