ソフトB・中村晃 初球から振らない男が本領 “鬼の選球眼”で今季1号逆転V弾

[ 2023年4月17日 05:07 ]

パ・リーグ   ソフトバンク6―3楽天 ( 2023年4月16日    楽天モバイル )

<楽・ソ>8回、中村晃は逆転2ランを放つ(撮影・沢田 明徳)
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 “ベテランの味”全開――。ソフトバンクの中村晃外野手(33)が、16日の楽天戦(楽天モバイルパーク)で、2―3とリードされた8回無死一塁、逆転の今季1号を放ち勝利に導いた。中村晃は5回にも四球を選び得点を演出、9回にも犠飛を放つなど、持ち前の選球眼を発揮。3打点を挙げる活躍でチームをけん引、貯金を再び6とし連勝街道を突き進む。

 風向きが変わった瞬間を逃さなかった。2―3の8回無死、牧原大が空振りの三振。投球はワンバウンドとなり、ボールが一塁へ送られる。アウトだと誰もが思った次の瞬間、楽天の一塁・フランコが捕球ミス。無死一塁、明らかに気落ちした相手バッテリーの動揺を中村晃は見逃さない。3ボール1ストライクからの高めの甘い直球をつかまえ、右翼へ逆転1号2ランだ。

 「バントもあるかと思いましたが、監督が打てのサインを出してくれた。カウントがよかったので、思い切ってスイングできた」

 確かにカウントは有利だった。ただ、そこへ誘導したのはこの男だ。4球目まで一切、手を出さない。「流れも気にするので、初球を打って、フライを打ち上げたら次の打者もやりにくい。考えてやってきたスタイルなので変えるつもりはない」。追い込まれても捉える技術が高いから、ぎりぎりまで甘い球を待つことができる。

 接戦だったこの日、5打席すべて初球は見送った。0―2の5回先頭で四球を選び、同点のきっかけをつくる。9回1死満塁は甘く入った2球目に欲は出さず、中犠飛で着実に点差を広げた。「ヒットだけじゃなく、四球、進塁打、犠飛も勝つためには大事。なにかで貢献できるようには意識しています」。派手さはないが、こういう考えが打線を“水もの”にしにくくする。

 「1番から6番の中村晃まで変えるつもりは一切、ありません。どこからでも点が取れる」と藤本監督は評価する。昨季は114試合で打率・253と全盛期の存在感は示せず、オフには減額制限の9000万円減となる年俸1億5000万円で2年契約を結んだ。中村晃が言うように昨季まではバントの可能性もあった場面だが、「打て」となったのは、開幕からの状態を評価されてのことだ。

 「これからもずっと(バントではなく)打たせてもらえるように、やっていきたい」と控えめな男は、控えめに言った。その言葉が中村晃らしかった。(福浦 健太郎)

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2023年4月17日のニュース