セ・リーグDH制導入見送りの是非 セ6球団が共有すべき危機感 巨人提案へ議論は尽くされたのか

[ 2020年12月14日 21:55 ]

日本シリーズで全試合DH制で戦った巨人・原監督(左)とソフトバンク・工藤監督
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 セ・リーグの理事会で巨人が来季、暫定的にDH制を導入することを提案したが、見送られた。日本シリーズで巨人がソフトバンクに2年連続の4連敗で屈した衝撃は、球界に、特にセ・リーグに強い危機感を抱かせた。そんな背景もあり、OBの野球評論家や野球ファンからは、セへのDH制導入について侃々諤々(かんかんがくがく)議論が沸き起こっていた矢先でもあった。

 DH制となれば補強の方針や内容も変わる。来季から、とにらめば時間が残されていないことは事実。リーグの底上げへ、DH制が即効性のある処方せんではないことも明らかだろう。なぜならパ・リーグでは45年も昔に導入されていたのだから。

 ただし、この日の理事会において、十分な議論が尽くされたのかは不透明だ。数年前から議論されており、セ・リーグとしては結論が出ていると主張するセ球団幹部の声もあるが、今あるコロナ禍やリーグ間の格差はその当時とは違うはずだ。識者やファンからの、セにもDH制が必要なのでは、と問う声の量も、熱も。

 この日改めて提案された案に対して即見送りという結論を出さず、各球団が持ち帰って調査、協議することはできなかったのだろうか。巨人の山口寿一オーナーは提案理由の一つに「点差によって投手が打席後方に立ち振らない、または空振りする場面が見受けられるが、プロスポーツとして本来許されるものではないと考えます」と挙げている。ファン目線に立った主張といえる。他球団は今件について、今現在のファンの声を広く拾う作業を行った上での判断とは思いにくい。

 DH制一つに限らず、セ各球団はリーグの底上げへ、さまざまなアイデアや策を練り、議論を重ねていく必要がある。プロ野球の魅力を損ねないための、ファンが望む戦いを届け続けるという思いが根底にあるはず。危機感は本当に共有できているのか。(後藤 茂樹)

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