エンゼルス・大谷 メジャー3年目の舞台裏…必然だった投打の苦闘、浮かぶさまざまな疑問点

[ 2020年9月29日 06:30 ]

<ドジャース・エンゼルス>2回、快足で内野安打にした大谷(AP)
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 エンゼルスの大谷翔平投手(26)は27日(日本時間28日)、メジャー3年目を終えた。2年ぶりの二刀流に挑んだが、投手ではわずか2試合で右肘の故障に見舞われ、打者では打率・190と苦しんだ。球団は6年連続でポストシーズン進出を逃し、大谷獲得に尽力したビリー・エプラーGM(45)の解任を発表。来季の二刀流プランは不透明となった。「Monthly Shohei」20年最終回は、大谷の周辺で何が起こっていたのかを検証する。(大リーグ取材班)

 今季最終戦の終了から4分後、エプラーGMの解任がエンゼルスから発表された。米メディアによれば今夏に契約を延長。来季が契約最終年だったが一転、チームの不振の責任を取る形となった。
 大谷は18年10月に受けた右肘のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)から2年ぶりの投手復帰を目指した。結果は0勝。実は今季を通じて、さまざまな疑問点があった。

 (1)ぶっつけ本番 開幕直前の7月23日。エプラーGMはオンライン会見で「翔平は5月からシミュレーテッド・ゲーム(シート打撃)でフレッチャーやラステラにたくさん投げた。より長い助走期間を取れている」と明かした。直球は96マイル(約156キロ)を数回計測している、とも。だが、その後の紅白戦3試合の結果は打者47人に16四死球と荒れた。

 初登板後には背中の張りを訴え、紅白戦の打者出場を見送った。それでも、エプラーGMは「登板ごとに、投げたいところへ投げられるようになった」と自信を崩さず。徐々に調子は上向いたものの、打者と真剣勝負ができる段階まで仕上がったとは言い難かった。

 本拠地近郊のロングビーチで、自軍のマイナー選手相手に調整登板させる選択肢もあった中で、チームは大谷の「ぶっつけ本番」を選択。その結末として2試合で1回2/3しか投げられず、「右肘付近の屈筋回内筋痛」を発症して今季中の投手復帰が消滅した。

 (2)食い違う説明 その後、球団はコロナ禍でリハビリが難しかったことを理由に挙げるようになる。ジョー・マドン監督も、故障発覚後の8月上旬に「二刀流を続けるかどうかを決める前に、ノーマルな状態で(春季キャンプから)準備をすればどうかをもう一度見てみないと」と、調整が十分ではなかったことを暗に認めた。

 (3)進まないリハビリ 来季に向けて心配な点は他にもある。大谷の右肘痛は全治4~6週間と発表されたが、2カ月近く経過した今も投球プログラムを再開していない。当初、ミッキー・キャロウェー投手コーチは9月中旬頃から投球再開のプランを披露していたが、数日前には「その情報はまだない。専門チームが、それについては考えている」と前言を撤回するような説明。責任者不在、行き当たりばったりと言わざるを得ない。

 この日の試合後、マドン監督は「スローイングは1カ月以内に始めると思う」と見通しを示した上で「球団は大谷の体の調子や彼がどう感じているかを、もっと知らなければいけない」と訴えた。17年オフ、二刀流の起用プランを示して大谷を獲得したエプラーGMがチームを去った今、誰がかじ取りをするのか。米4年目を前に、二刀流は大きな転機を迎えようとしている。

 《密回避&サイン盗み影響》「打者」も不発に終わった。打率.190、7本塁打、24打点。153打数で約3分の1の50三振を喫した。不振理由の一つとして、考えられるのはビデオルームの使用禁止だ。

 大リーグでは14年以降、打者は試合中にビデオルームで映像を確認することができた。しかし、アストロズのサイン盗み問題とコロナ禍による「密」を避けるために使用禁止に。カブスのバエスら、ビデオチェックを重視してきた選手は不満を訴え、今季の「投高打低」の要因にも挙げられている。大谷もこれまでは打席を終えると映像を確認して修正していただけに、この日「個人的には凄く見る人。見送ったボールがどのコースなのか、自分がどういうふうに打っているのかを見たい」と本音を語った。ただ、来季も使用禁止は続く可能性があり、「できないものはしょうがないので慣れるしかない」と言う。

 ロボット審判導入も近いとされ、球審のモチベーションが低かった今季はストライクゾーンも不安定だった。変わりゆくメジャーにどう対応するか、対策は急務となる。

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