エンゼルス・大谷 打者専念初打席初スイングで不屈の先制3号 マドン監督絶賛「今までで最高のスイング」

[ 2020年8月8日 02:30 ]

ア・リーグ   エンゼルス6―1マリナーズ ( 2020年8月6日    シアトル )

<マリナーズ・エンゼルス>2回無死から先制の3号左越えソロアーチを放つ大谷(AP)
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 不屈の一振りだった。エンゼルス・大谷翔平投手(26)が6日(日本時間7日)、敵地でのマリナーズ戦に「4番・DH」で出場。2回先頭の第1打席に先制の左越え3号ソロを放った。「右肘付近の屈筋回内筋痛」で投手としての今季登板が消滅して以来、初打席の最初のスイングで豪快アーチ。日本選手通算599本目で、同歴代単独5位となる通算43号は、窮地での精神的な強さを証明した。

 懐疑、不安、悲観…。周囲の見方を、一振りで覆し、驚きに変えた。大谷が大谷である証だ。2回の第1打席、1ボールから外角への87マイル(約140キロ)のスプリットを、左翼席へ運ぶ3号ソロ。実況席では「彼は現実離れしている!」の声が響いた。

 「運良く捉えることができました。壁を越えてくれて良かったです」

 球団を通したコメントは短かった。だが、逆境で見せた強さは強烈だった。5日の取材対応で継続へ意欲を口にした二刀流。「投」の太刀を来季まで封印する代わりに、「打」の太刀は威力を増した。右肘の故障が判明した不安の声を、バットで一刀両断。2年前のあの日と同じだった。

 18年9月2日のアストロズ戦で右肘を痛め、5日にじん帯再建手術(通称トミー・ジョン)の勧告を受けた。直後の同日レンジャーズ戦で2本塁打し、右肘を痛めて以降3戦連発で計4発。同手術から復帰2度目の登板で再び右肘を痛めた逆境で、改めてメンタルの強さを見せた。今季から指揮を執るジョー・マドン監督は「今までで最高の、最も力のこもったスイングだった。彼は今、(大爆発の)寸前にいる」と絶賛し、量産を予言した。

 打者専念となる短縮シーズンで見えてくるのが、残り47試合での打撃タイトルへの挑戦。指揮官は、体調不良や相手投手の左右での休養を除き「ほぼ毎日プレーする。可能な限りたくさん打席に立たせる」と言った。逆方向に運んだこの日の一発は、39度の高角度。米国で「ムーンショット」と呼ばれる大きな放物線を描いた。長打の確率が上がるとされる「バレル率」は両リーグ2位の17・9%で、7本塁打でトップのヤンキース・ジャッジの12・8%をはるかに上回る。出塁率の高いトラウト、レンドンの後を打つ4番で、打点量産への期待も高まる。

 右肘故障の打撃への影響も見せなかった。第3打席の左飛まではファウルも全て逆方向。だが、7回の4打席目はアルタビーラの内角99マイル(約159キロ)を右腕に力を込めたスイングで引っ張りファウルし、98マイル(約158キロ)を中飛とした。
 マドン監督は「いつか、違うことを考えるかもしれない。しかし今は、これまで通りの(二刀流)プランで行く」と来季の二刀流継続を再確認。再び「投」の太刀を取り戻すまで、大谷が一刀流の最善を尽くす。(奥田秀樹通信員)

 《バレル率今季2位》長打になりやすい打球速度と打球角度を組み合わせた数値が「バレルゾーン」。基準は打球速度98マイル(約158キロ)以上で、その場合の打球角度が26~30度。打球速度が上がれば角度は広がる。バレルゾーンに入れた打球の割合を示すのが「バレル率」。結果球となった打球がバレルゾーンに入った数を打席数で割った数値で、大谷は今季リーグトップで両リーグ2位の17.9%(試合数×2.1打席以上対象)だ。18年は打球数200以上では両リーグ6位の9.8%、昨年は同37位の8.0%だった。

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