阪神新監督が目を潤ませた――3・29、近本が呼んだ初陣サヨナラ星

[ 2020年4月17日 05:30 ]

開幕よ、来い――猛虎のシーズン初戦を振り返る

19年3月29日<神・ヤ>6回、同点の適時三塁打を放ちガッツポーズの阪神・近本
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 【2019年3月29日 京セラドーム 阪神2―1ヤクルト】阪神・矢野燿大は劇的な初陣勝利に目を潤ませた。「どんだけかくねんっていうぐらい手に汗をかいていた。俺は選手を信じることしかできない。信じた結果というか、みんながそれぞれ頑張ってくれた。一生忘れない1勝になると思う」。前年秋に盟友とも言える金本知憲が監督を電撃解任され、迷った末に重責を引き継いだ。2軍監督時代からの3大指針「超積極的」「諦めない」「誰かを喜ばせる」を変わらず掲げ、最下位から再出発した。

 1番遊撃で木浪聖也、2番中堅で近本光司を送り出した。新人2人が開幕オーダーに名前を連ねるのは、72年の中村勝広(1番二塁)と望月充(3番左翼)以来47年ぶり。1、2番に並ぶのは球団史上初の出来事だった。

 0―1の6回。2死からの同点劇を、この2人が演じた。木浪の遊ゴロが失策を誘い、直後の初球を近本が打ち返した。散発2安打に抑えられていた小川泰弘のチェンジアップを右中間へ三塁打。木浪を一塁から生還させ、記念の初安打が殊勲の同点打になった。

 「結果もそうですけど、やりたいことができたのでよかった」。球団新人が開幕戦で打点を挙げたのは56年の大津淳以来63年ぶり。戻ってきた記念球を「両親にあげます」と大切に握りしめた。

 持ち込んだ延長戦。最後に“決めた”のも近本だ。11回先頭、16年目で初めて開幕をベンチで迎えた鳥谷敬が代打で右翼フェンス直撃の三塁打。木浪の三振で1死になって打席へ。「決めてやろうというか、点につながるような結果にしたい…と。まさかという感じ」。初球、石山泰稚のフォークがワンバウンドの暴投になって代走の江越大賀がサヨナラの本塁を踏んだ。

 振り返れば、初回無死一、二塁からの山田哲の中前打では本塁補殺の好返球で失点も防いだ。「阪神で野球ができているのがすごいな…と」。独特の緊張感に包まれても堂々の勇姿だった。開幕スタメンが決定的になった頃、祝福された友人に「そういうところを狙っていない」と言い切ったという。宣言通り長嶋茂雄のセ・リーグ記録(153安打=58年)を更新する159安打を放ち、36盗塁で盗塁王にも輝いた。

 あの3・29から、きょう17日で385日。矢野、そして、近本が待望する2年目は、まだ始まらない。=敬称略=(この項、終わり)

 ▽2019年の世相 テニス・大坂なおみが全豪オープン制し世界ランク1位浮上(1月)、マリナーズ・イチローが現役引退(3月)、天皇陛下生前退位で新元号「令和」に(5月)、吉本興業が闇営業参加の芸人を謹慎処分に(6月)、日本でラグビーワールドカップ開催(9月)、消費税が10%に増税(10月)【流行語】「ONE TEAM」「タピる」「○○ペイ」【漢字】令

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