オリックス・岸田、金子が抜けた投手陣を支える“人間力”

[ 2019年1月7日 08:30 ]

キャッチボールで調整するオリックス・岸田
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 5日にオリックス岸田護投手の自主トレ公開があり、私も取材に行った。新年を迎えても相変わらずのひょうきんさ。昨年の試合中にブルペンで吉田一の首をつかみ、「俺もう引退やぞ。いつになったら優勝させてくれるんや!」と叫んだ、などのエピソードを紹介したが、少し言葉足らずだったので付け加えると、これは岸田流のリップサービスだ。もちろん事実ではあるが、本当に力一杯首をつかんで大暴れしたわけではない。わざわざ取材に来て頂いたので、と多少脚色しつつ、記者におもしろく話してくれる彼の優しさでもある。しかし、ある話をしたときだけは、本音がこぼれたように感じた。

 「去年、17試合しか投げていないんですけどね、ファンの方に『今年頑張りましたね』と言われて、これで良かったと言われるまで、自分は投げていない投手なんだな、と思いました。若い投手なら、中継ぎは最低50試合。頑張りますよ。自分もキャンプで投げられるようにアピールして、結果を出していかないと」

 17試合とはいえ、防御率は2・35と安定していた。ファンも「まだまだ岸田はやれる」と思ったのだろうが、本人の目標からは遠い。長年、オリックスを支えてきた投手。背番号18のエースナンバーだ。プライドもあるのだ。

 今季限りで引退した佐藤達也が、かつて岸田について話していたことを思い出す。「うちのブルペンは、マモさんがいるから強いんですよ」。ブルペンの中の一体感づくり。若手や外国人への気配り。野球の流れを観察する能力。それを、自慢げに他の投手に押し付けたりせず、みんなと共有する人間力。時にひょうきんさも交えて。これが岸田護なのだ。精神的支柱として、まだまだオリックスのために頑張ってもらわないといけない。背番号だからではなく、金子がいなくなった今だからこそ、エースと言ってもよい、と私は思っている。

 オフに入り、大阪市の室内練習場には、決まって昼頃から顔を出し、夕方には1人で黙々とネットピッチングなどをする姿がある。「朝は遊んでいるから忙しいんですわ」と笑うが、若手が多く練習場でスペースが少ない午前中を避けているのも、彼の優しさだと私は分かっている。

 「僕もそんなに長くは野球はできない。オリックスで優勝が目標。それができたら引退ですわ」。再びワハハと笑ったが、これもリップサービスだと私は思っている。(オリックス担当 鶴崎唯史)

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2019年1月7日のニュース