ヤクルト 4月16日以来の貯金 苦労人・古野が3年ぶり白星

[ 2018年8月30日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト4―2阪神 ( 2018年8月29日    甲子園 )

先発・古野のピッチング(撮影・成瀬 徹)
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 ヤクルトが29日の阪神戦に勝ち、4連勝で4月16日以来の貯金1を手にした。先発の古野正人投手(31)が5回2失点。故障による育成契約を経験した右腕が15年6月25日の中日戦以来、1161日ぶりの勝ち星を挙げた。広島がどっさり貯金を抱えるセ・リーグで、広島以外に貯金をつくったのは7月20日の巨人以来となった。

 涙はなかった。宝塚市出身の右腕が、地元兵庫で受けたヒーローインタビュー。こみ上げる感情を抑えながら、古野は「リハビリの2年間で積み重ねたものを全て出せた。勝ちにつながったのは素晴らしいこと」と感慨に浸った。多彩な変化球を駆使して5回6安打2失点。3年ぶりの勝ち星を手にした。

 「ここまで何もできなかった。1軍の舞台でまたみんなと戦いたい。その気持ちだけでした」

 4回は味方の失策も絡んで2点を失った。勝利投手の権利がかかる5回は、2死から福留をイレギュラーバウンドの安打で出し、暴投で走者を二塁まで進めた。ここで糸井をフルカウントからファームで磨いたカーブで遊ゴロ。思わずマウンドで両手を叩いた。

 16年6月15日のソフトバンク戦で打球処理の際に右手をつき肩を亜脱臼した。リハビリに時間を要するため同年秋に背番号118、800万円減の年俸1000万円で育成選手として再契約。オフにネットスローを再開したが、痛みに襲われる日々だった。

 「腕を下げないと投げられない」と、横手投げで練習したこともあった。一進一退の状態に「終わったと思った」と引退すら頭をよぎった。それでも1軍戦をテレビで見て、思った。「悔しいし、うらやましい。また神宮のマウンドに立って勝ちたい」。その気持ちが古野を支えてきた。

 7月30日に支配下契約。13年4月19日にプロ初登板を果たした甲子園で、今季2度目の先発で結果を出した。「(甲子園は)小さい頃からテレビで見ていた。応援に負けないように、はね返そうと思った」。30日に出場選手登録を抹消される見通しだが、またチャンスはある。「変わらず、準備だけはしていきたい」。たくましくなった背番号40の背中。思いのこもった84球で、復活ロードを踏みしめた。

 ◆古野 正人(ふるの・まさと)1986年(昭61)9月27日生まれ、兵庫県出身の31歳。報徳学園から龍谷大に進み、日産自動車―三菱重工神戸を経て11年ドラフト6位でヤクルト入団。13年8月6日の中日戦でプロ初勝利。15年は自己最多の4勝を挙げた。通算成績は62試合登板、9勝12敗2ホールド、防御率5・00。1メートル78、80キロ。右投げ右打ち。

 ≪貯金キープできるか≫ヤクルトは4連勝。4月16日以来の貯金1とした。5月25日時点で15勝26敗1分けの借金11。ヤクルトが2桁借金から貯金をつくったのは10年以来8年ぶり7度目になるが、シーズン終了時に勝ち越したのは前記10年(最終72勝68敗4分け)だけ。他のシーズンは全て借金に逆戻りしているが今季はどうか。

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2018年8月30日のニュース