地方大学から全国区に 投打のライバルが高み目指す

[ 2018年7月5日 15:34 ]

初安打を打った八戸大の同級生の秋山(右)に声をかける塩見(撮影・篠原岳夫)
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 【伊藤幸男の一期一会】楽天の塩見貴洋投手(29)が快調に飛ばした。6月29日の西武戦。内外角へ制球された直球に100キロ台のカーブを織り交ぜ、山賊打線につけいるスキを与えない。5回6失点で降板した菊池とは対照的に、6回2死まで無安打。だが八戸学院大の同級生だった秋山翔吾外野手(30)に中前打を喫し、夢は消滅した。ここで塩見が思わず発した言葉こそ、大学時代から競い合ってきた「親友」に向けられた本音だった。

 「おまえ、打つなや!」。記録が途絶えた6回終了後、一塁ベンチへ引き上げる左腕が気迫ほとばしる形相で声を上げた。周囲は一瞬、険悪な雰囲気に包まれたが、2人は普段の“会話”をしていたはずだ。

 「あいつが(塁上で)ニヤけていたから…。直接言ってやりました」。今季初勝利にも素直に喜べない塩見に、秋山は「1本目がボクだったし、なおさらじゃないですか」とさらり受け流した。

 ともに11年春、北東北大学リーグの八戸学院大を卒業。前年ドラフトで塩見は楽天からドラフト1位、秋山は西武から3位指名を受け、あこがれの世界に足を踏み入れた。

 プロ入り後は塩見が順調に白星を重ねていったが、15年に立場は逆転する。秋山が1シーズン216安打のプロ野球記録を達成。侍ジャパンでも不動の先頭打者として17年WBCなど存在感を発揮した。一方、塩見は16年こそ8勝も、17年は3勝止まり。今年も出遅れていたが、この日で少しだけウサを晴らした。初ヒットを打たれた相手だけ除いて…。

 同一リーグでしのぎを削ってきた2人の関係を、八戸学院大の恩師・正村公弘監督(54)が説明した。「昔から仲は良かった。ウチのOB会で顔を合わせた時もよく話してます。壇上での挨拶となれば、お互い褒め立てていたかな。塩見は“秋山選手にはよく打たれてます”と言ってますけど…。大学時代は塩見がいて、秋山がいる感じでしたけどね」。

 今年6月の全日本大学野球選手権は東北福祉大学(仙台六大学)が14年ぶり3度目の優勝に輝いた。4強へ進んだ九州産業大(福岡六大学)は初戦で東海大(首都)2回戦で東洋大(東都)を下した。地方大学が関東、関西の伝統校を撃破することは珍しいことではない。ただその野球部が全国区をキープできるカギは、OBの活躍次第となることは否めない。

 偉大な先輩の動向はやはり気になる。現在、同大卒のプロ野球現役は4人。正村監督が補足した。「そういえば部員がその試合をテレビで見ていて…。“塩見さんと秋山さん、言い合ってますね”なんてうれしそうでしたよ」。後輩にも2人の「向上心」は確かに伝わっていた。

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2018年7月5日のニュース