阪神 異例のコーチ会議「力負けやな」 金本監督“超改革”は努力の道

[ 2016年6月10日 09:35 ]

<ロ・神>5回2死一塁、井口の打球を後ろにそらしタイムリー二塁打としてしまう横田

交流戦 阪神2―7ロッテ

(6月9日 QVCマリン)
 試合終了は午後9時39分、バスが球場を出発したのは10時になっていた。異例と言えるコーチ会議が開かれていた。

 「う~ん」と阪神チーフ兼守備走塁コーチの平田勝男が顔をしかめた。3タテを食らい、負け越しは最多の3となった。「力負けやな……」

 それは十分承知している。監督・金本知憲も前夜「これが実力」と話した。まだ、その力はないとわかった上で若手を先発メンバーで起用する。むろん、勝ちにはいくが、そこには育てようとする信念がある。

 たとえば、8番中堅・横田慎太郎と6番左翼・高山俊。開幕戦から抜てきし、今季の若手登用を象徴する2人が守備でまごついた。

 2回裏は2死二塁から中前打、左前打と続けて単打が飛び、いずれも本塁送球が乱れて、二塁走者の生還を許した。間一髪にもならなかった。

 5回裏は2死一塁から中前へ落ちるポテン打に横田が飛び込んだが捕れず、バックアップした高山が送球したが一塁走者の生還を許した。

 この日試合前も外野守備走塁コーチの中村豊が盛んにノックを打った。横田に「もう700万回言っているけどな」と大げさに声をかけ、1歩目で上体が浮く悪癖を「目線がずれて打球が揺れるだろう」と指摘する。

 技術習得には時間がかかる。反復練習しかない。1軍を肌で感じ、自分の実力を知る。目指すレベルとの差がわかれば、努力の道が見える。

 QVCマリンフィールドのスタンドにはツバメがいくつも巣を作っていた。エサを運ぶ親鳥にヒナたちの鳴き声が響く。

 禅語に「?啄(そったく)同時」とある。卵からかえる時、ヒナが殻を内側からつつく?、親鳥が外からつつく啄。このタイミングが早くても遅くてもヒナの命が危ない。?啄は同時でなくてはならない。猛虎の金の卵たちは、今がその時かもしれない。

 10日は「時の記念日」。ロッテOBでもある小宮山悟にその名も『成功をつかむ24時間の使い方』(ぴあ)という著書がある。プロ入り当初、先輩の牛島和彦に教えを請いにいくと、最初に「寝るな」と言われた逸話がある。「寝ないと頑張れないヤツは所詮(しょせん)その程度だ」。

 敗戦後のバスは千葉から東京都内へ、長い道のりだった。失敗や敗戦に眠れぬ夜もあろう。それでも、頑張るしかないのである。 =敬称略=
 (内田 雅也編集委員)

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